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(7-350)

作者:7代目スレ350氏
備考1:女魔王×勇者
備考2:「深いダンジョン最奥部に居る魔王っぽい悪女の話。軽くグロしかないです」(作者氏)

「もういいわ。あなたは諦めた」

 そう吐き捨てたキャロルは、掲げた掌に、巨大な炎を渦巻かせた。それまで鬱蒼としていた
はずの地底にくり抜かれた、深い洞窟の壁々があっという間に焦がされていく。
 地獄の業火を呼び寄せると古より伝わる禁呪だ。
 煌めく明滅が、キャロルの美しく流れる銀の髪と、纏われた漆黒のローブを闇へ映し出す。
その美しい微笑と、体中から溢れでる魔の波動が、対峙していたひとりの勇者へ圧倒的な恐怖
となって襲いかかっていく。

 勇者は、手にした剣も取り落とさんばかりに、じり下がった。
 放たれなくても、この勢いだ。
 狭っくるしい地底にわずかとあった酸素など、瞬く間に燃やし尽くされ、呼吸を奪われてし
まうだろう。
 ならば。
「くそ……いちか、ばちかだ!」
 と勇者は剣を構え治し、キャロルへ飛びかかる。
 それと、彼が焔にまかれたのは、ほぼ同時だった。
 一瞬の悲鳴のあと、勇者はそのまま火だるまとなり地べたへ這いつくばった。

「くくく……燃えろ燃えろ。あなたがこれまで歩んできた人生と、大切な思い出。未来への希
望。全て、この光も届かない地の底で灰にしてあげる。どぉ? 悔しいでしょう? でも、あ
なたにはもう、どうすることも出来ないの。さようなら。ふふふふ……」

 キャロルの嘲笑が炎の燃える音と共に、洞窟へとこだまする。
 そして、それまで人間だった炎のかたまりは、しばらく転がり回ったあとに、やがて動かな
くなって消える。
 去った炎の跡には、炭化したことが伺える骨のカケラがわずかに残っているだけだった。
 もはやキャロルの操る禁呪でも、アンデッドとして甦らせることさえかなうまい。この勇者
は、ここ数年で相手にした人間の中ではかなりの強者だった。
 そうでないような勇者になど、キャロルは禁呪を用いることもない。通常呪文で十分だ。

 ただの人間とは年季が違った。
 彼らの寿命はどれほど長くても、せいぜい百年。しかも、その内で自分と渡り合える頑健な
身体を維持できているのなど、二十年にも満たないだろう。
 そんな短い時間でいくら鍛えても、対するキャロルは数千年もの時をかけて魔力を高め続け
ている、文字通りの魔物である。
 勝てるはずがなかった。
 無論、軍隊でも攻めてきたら話は別だが、彼女は人里離れた深い谷の底から、さらに地下数
百階という、暗黒の世界に閉じこもって外界との接触を一切断っているのだ。

 だのに、どこから噂を聞きつけるのか、時々勇者と呼ばれるタイプの人間が自分を倒そうと
ここへやってくる。財宝も何もない、そもそも地上の谷にたどりつくだけでも命懸けなのに。
(大した根気ね)
 そんなとき、キャロルは丁重に出迎える代わりに、じわじわと痛めつけてその愚かさを自覚
させてやることにしている。
 見えている蜘蛛の巣……アリ地獄でもいいが、そこへわざわざ突っ込んできてくれる勇者た
ちに感謝の意を込めて。
 だから今日は、キャロルにとってはかなり残念な思いのする日だった。

 今日の勇者は若く、しかも顔立ちがよかった。もっと弱ければ、じっくり嬲って楽しめたも
のを……と思うと、キャロルの胸に陰鬱な怒りが込み上げてきた。
「……ふん」
 じゃり、と憎らしげに炭化した骨を踏み砕く。
 本当に惜しい。
 顔かたちの整った勇者など、数百年に一度、現れるかどうかというものなのだ。本来だった
ら動けなくしたあとに、裸に剥いて最低の屈辱と至上の恐怖を与えるところだったのに。

 自分を斃す気でいた人間の戦意を一つずつそぎ落としていくのは、なによりも勝る快感だ。
 恐怖の言葉を吐きながら、目を潰し、鼻を砕く。視覚と嗅覚を断ったら、今度は鋭く磨いだ
五指の爪で、何日もかけてゆっくりと全身を傷つけていく。
 意気地のない勇者なら、この時点で命乞いをするがキャロルは残酷に余命を告げて、反応を
愉しむ。
 逆に耐える勇者ならば、すこし楽にしてやるのだ。
 これで余裕が生まれると、すかさず甘い言葉を吐く。萎え果てた身体に食物を与えて優しく
会話を交す。すると、人間とはおかしなもので、散々な目に逢わされているというのに生存へ
の希望を持つらしい。
 そうなればしめたものである。キャロルは
「助けてあげましょうか?」
 と訊く。そこで、まず間違いなく返ってくるうなずきに、
「じゃ……うんと長く苦しませてから、殺してあげる……」
 こう囁く。
 耐えた人間はいまだかつて居ない。良くて絶望、悪ければ発狂したものだった。

 そうして、水以外は何も与えずに一、二ヶ月、ほぼ餓死寸前となるまで、ごくごくゆるやか
に肉体を傷つけ、責め続けるのだ。
 このあたりまでくると、みな例外なく生きる意思を喪失する。
「殺してくれ」
 と。
 その懇願に、キャロルはいつも優しく微笑んだ。もっとも、もう相手には見えていないだろ
うが。
「おつかれさま」
 言うキャロルは、しかし最後まで獲物が苦しむ様を見るため、錆付いた剣を用意している。
それを性器にあてがうと、鈍りきった斬れ味をノコギリのように使って、勇者の人間としての
象徴を、無惨に破壊していくのだ。

 死にかけとはいえ痛覚は残っているから、勇者だったものは与えられた巨大な痛みと出血に
痙攣し果てていく。
 キャロルはそのみじめな姿を嘲笑いながら、愛用の大鎌で首を刎ねる。
 干からびたかのように見えた肉体から、鮮血が吹き出て注ぐ。その瞬間が、彼女にとって最
高の快感と、遊び道具を失う空しさとを同時に味わえる至福の時だった。

 それが全部、お預けになってしまったのだ。

「本当、残念」

 キャロルはつぶやいた。
 最低でも、また数十年はこの地底洞窟で独り、延々と魔力を高めるべく瞑想を続ける他はな
い。
 ……そういえば私、いつからこんな所に居たのかしら。
 ふと、そんな言葉が頭をよぎったが、すぐに考えるのをやめた。ここのところ、深い思考を
するのが苦痛なのだ。

 最初は、自分を裏切った者たちへの復讐のため、魔の存在へと堕ちた。
 しかし不老の身となり、魔力を養うべく永劫の時を過ごせば、だんだん人間としての感覚な
ど消えていくのも、また必然であった。
 いつしか短絡的な復讐には興味がなくなり、親の顔も恋人の顔も、裏切り者たちの姿まで忘
れると、時はみるみる流れた。
 そのうち、キャロルの住んでいた国も、その文化も、言葉さえも時間の中で滅び去って、歴
史書の片隅に残る存在でしかなくなってしまう。
 それならば、と魔の者らしく、人間すべてを抹殺するべくさらに魔力を高めて地底へと籠も
ったのが丁度五〇〇年前のことだった。
 ……気がつけば、彼女の心からは、人間そのものへの関心すら消え失せていた。
 残ったのは、時々あらわれる勇者をいたぶって遊ぶことだけを愉しみにする、獣のような衝
動だけである。
 いずれは、自分が何であったのかも忘れて、理性を失っていくのかもしれない。
 これこそが魔に堕ちるということだったのか。
 しかし、そんなことは、今のキャロルにとってどうでもいいことだ。

「次、玩具が来るのはいつかしらね……」
 
 静寂を取り戻した地底洞窟に、再びキャロルは彷徨いはじめるのだった。
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