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官能の暗殺者4

作者:5代目スレ920氏
備考1:女暗殺者×政治家の従者
備考2:






 モーニングサービスや朝食のルームサービスなどはすべて断った。部屋には見られては
ならないものがあるのだから止むを得ない。
 宿泊客用のレストランで朝食バイキングなどを終え、部屋に戻ってホテルを出る用意を
整える。自分の、そしてガイヤーの荷物もチェックしたところで思い出した。
(そういえば娼婦分の報酬、まだもらってないわね)
 ガイヤーのバッグの中を引っ繰り返すと――高額紙幣が何十枚か出てきた。あれだけ
サービスして何度も抜いてあげたのだから、もっと高い金を取りたいが……まあ、死者に
そこまで要求するのは酷というものか。
 紙幣の束を荷物に入れて一階に降り、ロビーで適当なホテルマンに声をかけた。
「ねえ、このホテルの支配人を呼んでくれない?」
「は? お客様? 支配人……でございますか?」
「ええ、ディメルオ・ラングロットでしょう? 彼に"リューシアが来ている"って伝えて
欲しいの。半端なところで伝えるのを止めたら、あなたのクビが飛ぶわよ?」
 私がこう脅しても、そのホテルマンが動じたのは一瞬だけだった。すぐに「かしこまり
ました」と頭を下げ、バックヤードのスタッフルームへと消えていく。
 ロビーのソファに座ってしばらく待っていたら、支配人の中年男性が血相を変えてやっ
てきた。あのホテルマンもよくあの程度の通告を上に取り次いだものだ。
「大変お久しぶりです、リューシア様」
 その名は私が暗殺の時に使う偽名だ。
「こちらこそお久しぶりね、ディメルオさん。私がその名前で来たってことは――どうい
うことか分かってるわね?」
「は、はい。同室の方が"お眠りになったまま"、ということですね?」
 その答えに満足した私は蠱惑的に笑ってみせる。
「ええ、その通りよ。後始末は任せるわね」
「かしこまりました。宿泊記録と痕跡の整理、お引き受けいたします」
 私はディメルオに礼を言い、その足でホテルを出た。



 キングダムホテルはこれから警察の捜査が入る。犯人の私が留まり続けるのは愚策だ。
市内の別のホテルに移り、そこを起点に各界への工作を仕掛けようか――などと思いつつ、
ホテル前のロータリーに出ると、すぐに声をかけられた。
「お待ちしておりました。おはようございます、ラセリア様」
 振り返った視線の先にいたのは、私がここまで乗ってきた馬車の御者だった。私と目を
合わせると、頭を下げてきた。
「本日もよろしくお願いいたします。今日はいかがなさいますか? ガイヤー様からはラ
セリア様の望む場所に案内せよ、とのお達しです。隣国にお戻りになられるのでしたら、
昨日の国境までご案内いたしますが」
「ガイヤー様も根回しが良くて嬉しいわ…あなたも立派ね。本国に戻るのはしばらく先に
なるわ。今日は北部の十四番通りにまで連れて行って欲しいのだけど――」
「十四番通り……と申されますと、ホテル・グランスターですか?」
「さすがに知ってるみたいね。ええ、そこに行きたいの」
 ホテル・グランスター。ネーディア市ではキングダムホテルに次ぐ名門ホテルである。
キングダムホテルよりも官庁街・議会場に近いため、政財界の要人が密会するのによく利
用されるという。
「かしこまりました。ご案内いたします。申し遅れました、わたくしの名はライゼンです。
ご用件は気軽にお申し付けくださいませ」
 御者ライゼンは恭しく頭を下げ、馬車の扉を開けて私を車内へと誘った。


 舗装された道は振動も少ない。快適な馬車の中で紅茶などを飲みつつ、私は市街地の様
子をうかがった。十四番通りのホテル・グランスターまではまだ距離があるようだ。
 当初は自分でそこまで向かおうと思っていたが、こんなに手際よく迎えに来られては、
もう少しの工作が必要となりそうだった。
「ねえ、ライゼンさん。昨晩のことはあなた以外に知っている人はいるの?」
「いえ、わたくしだけです。極秘任務と聞いております。昨夜のお二人のことを知ってい
るのはわたくしのみ。奥様を始め、ガイヤー様のご家族やマスコミにも情報が漏れぬよう、
わたくしが選ばれました」
 私に暗殺依頼が来ている限り、どこかから情報は漏れているはずだ。しかし彼が嘘を言
っているようにも思えない。やはりこれは盗聴か何かと考えるべきだろう。
「へえ……どうしてあなただったの?」
「推測ですが、わたくしはシュベルン家の御者を十年勤めております。わたくしだけでは
なく、父親も四十年にわたりシュベルン家にお仕えいたしました。もう家族ぐるみでの忠
臣と言っても過言ではありません。恐らくはその故かと」
「それは凄いわね…やっぱりお給料も高いの?」
 からかうように聞くと、ライゼンは苦笑しながら答えた。
「幸いにも。少なくとも、辞めたいと思えるような額でも仕事でもございません」
 彼の返答からは生真面目で優秀な使用人という人物像が浮かんでくる。品行方正で口も
堅いのだろう。召使いとしては理想的だ。
 さて、どうやってこの男の口を封じるべきか。
 今しばらくの時間が経てば、キングダムホテルから彼の主人が変わり果てた姿となって
発見される。私とガイヤー・シュベルンが会っていたのを知っているのは、この御者のラ
イゼンくらいだ。主人の暗殺ともなれば、この密会のことを警察にも包み隠さず話してし
まうだろう。それこそ私が逮捕されることを敵討ちと捉え、義憤のままに行動するかもし
れない。
(しょうがないわね)
 これからいろんな男と会うために身を清めてきたんだけどね――などと思いつつ、私は
腹を括るのだった。



「ごめんなさい、馬車を止めて……」
 ホテル・グランスターの十四番通りに入った直後、声の調子を弱め、室内から御者席へ
声をかける。程なくして馬車の振動が止まった。
「どうなさいました? お気分が優れませんか?」
 ライゼンは慌てたように振り返る。彼の背後に設けられた窓を開け、私は苦しげな顔を
作って懇願した。
「ごめんなさい、調子がおかしいみたいなの……少し馬車を止めて下さる? 少し待てば
元に戻ると思うから」
「かしこまりました。何かありましたら声をおかけください。近くには病院もありますの
で、必要とあらばすぐにご案内いたします」
 よく気の利く男だと思いながら、私は弱々しく言葉を返す。
「ううん、そこまでしてくれなくても大丈夫よ。でも、お願いがあるの」
「はい、何でございましょうか」
「ごめんなさいね…背中をさすってくださる?」
 苦しげな声の中に微かな甘ったるさを交え、御者にそう頼んでみた。
「背中……でございますか。かしこまりました、今すぐ参ります」
 微かに車が揺れた。道の端に馬を動かしたのだろう。
 すぐにかちゃりと音がして、馬車のドアが開く。
「大丈夫ですか、ラセリア様」
「ええ、大丈夫よ…病気なんかとは違うから」
 私は科を作って呼吸を乱れさせる。座席の隣にスペースを空けて御者を誘った。
「それでは失礼いたします」
 ライゼンは戸惑う風でもなく私の隣に座り、一礼してから私の背中をさすり始めた。
「ああん……はぁ…」
 私はまるでセックスで喘ぐような吐息を漏らす。勿論わざと、だ。
 背筋を撫でさすられる度に甘い響きを呼吸に含ませ、嬌声のような息に熱を込めながら
ライゼンの様子を横目でうかがえば――案の定だ。私の姿に顔を赤らめている。
 自分の体をかき抱くように、胸の下で腕を組む。するとバストが内側に寄せ上げられ、
二つの膨らみが刻む谷間が、より深く強調される。
 着ている服も元々、胸元の大きく開いた黒いドレスだ。ライゼンからも乳房の谷間は丸
見えのはず。体を捩らせるようにしてドレスのスリットから巧みに太股も覗かせ、同時に
ガーターベルトなどもチラつかせる――さぁて、彼の視線は奈辺にありや、と思いながら
男の目線を探ってみた。
 ライゼンは顔を真っ赤にしながら私の背中をさすり続ける。が、もう心はそれどころで
はないらしい。顔を上げれば艶めかしく悶える私の顔。視線を外せば豊かに育った乳房の
谷間。目を逸らしても魅惑的な太股とガーターベルト。そして先にはストッキングに包ま
れた長い美脚……彼がどこを見ようとも、私の体が男の性欲とフェティシズムに強烈な主
張を繰り返すことになる。
 おかげで彼の視線は上下あたふたと行ったり来たりだ。もう内面では私の背をさするど
ころではないのだろう。目のやり場に困っている。下半身もさぞや熱くなっていることだ
ろう。
「これ以上いじめたら可哀想ね」と心中で笑い、私は下準備から籠絡へと段階を移すこと
にした。
 ライゼンにしなだれかかり、肩を預けて顔を伏せ、苦しげに囁く。
「ありがとう、楽になったわ……ごめんなさいね。やっぱり私、調子が変なの……」
「だ、大丈夫ですか? 病院にご案内を……」
「ううん、それには及ばないわ……だって」
 私はそこで伏せた顔を上げる。それまでの苦悶の表情が一変しているはずだ。
 男に媚を売り、誘惑し、籠絡せんと狙うメスの獣――

「だって私……あなたに発情しちゃったんだもの」


 言うが早いか、私はライゼンの首に抱きつき、一気に顔を接近させて唇を重ねた。
 男の脳は目の前の現象を認識しているだろうか? 二つの唇が触れてなお呆然としたま
まの御者を絡め取るため、私は間髪入れず、舌で彼の唇を割った。
「んんぅ……ん、んん……」
 未だ男の抵抗はない。大水が渓谷の隅々までを埋め尽くすかのように、私の分身と化し
た舌はライゼンの口内を生々しく埋め尽くす。
 本人同様、愕然としたまま意思のない男の舌に、獰猛な私のそれが吸い付き、絡まり、
張り付き……男が獣の本能に従うよう、理性へ亀裂を入れていく。
 舌先でライゼンの唇をなぞり、吸い、舌先を男の口内に送り込み、互いの粘膜を通い合
わせて男を刺激した。更に奥へと潜り込ませ、すぐにも触れる男の舌を、私のそれでノッ
クするようにツンツンと突っつき、誘う。
「……! んぐ、んんぅ……!」
 ようやくライゼンの頭が事態を理解したようだ。しかしもう遅い。主導権は私が完全に
握っている。こうなった男を落とし損ねたことは一度もない。
 その証拠にライゼンがようやく反応した――たっぷりと私の舌は男を蹂躙し、今もなお
気力を奪おうとライゼンの舌に絡みついている。
 男の体に力が入った。これは抵抗の意志を示そうという動きだ。私の体から逃れようと
するのか、それとも私から主導権を奪い返すためかどうかは、まだ定かではない。
 だがこの反応を見せた後、私は後者の意志を削ぎ落とすために、第二波を男に浴びせる
ことにしている。
「ううっ……く、ぬ…」
 男が小さく震え、硬くした体からさらに力が抜けていった。代わりにのしかかるのが私
の体だ。強引に顔を男に迫らせ、まるで上から唇を奪いとるようなキスへ移る。舌使いは
今までよりも激しい緩急を見せ、唇から男の理性を粉砕しにかかる。
 抵抗力を失い、力のなくなった男の膝の間に私は太股を滑り込ませた。今やこの上なく
勃起しているであろう肉棒と脚が服越しにこすれ合い、快感でオスを目覚めさせる。
 肉体の密着度は先ほどより下げた。圧迫するような接触から距離を空け、二人の間に空
間も設けられるほどにだ。
 けれどそれで誘惑の手を緩めるわけではない。唇を重ねながら男の胸板に乳房だけを押
し付け、上下に這わせる。前面に突出した私の豊乳だからこそ可能な芸当だ。
 顔と顔が接しているために満足な視界が得られぬ男にとって、この胸だけの接触は強い
密着よりも想像をかき立てられ、激しい興奮を呼び起こす。いつでも野獣になっていいの
よ、とメスの肉体で主張することは忘れないのだ。



 この間もずっと、私の舌先は男の口内を這い回り続けている。もし立って唇を合わせて
いれば、男の膝はガクンと落ちる。余りの刺激に力が抜けてしまうキスというものは存在
する。
 こうして口唇の接合で圧倒し、男から抵抗する気力も失わせたところで、私はようやく
唇をもぎ離した。途端に互いの口から熱い吐息が漏れ、艶めかしい唾液の橋が私とライゼ
ンとを結んでいた。
 まるでライゼンは息も絶え絶えだ。目の焦点が一向に定まらない。私がその瞳を覗き込
んでも、蕩けたように意志の光は感じられなかった。
「ふふふ……」
 私は満足気に笑い、今度はだらんと垂れたライゼンの腕をとる。彼の指は……まあ可も
なく不可もなく、か。興奮を呼び起こさせるパーツではないのが残念だ。
 腕を取られても未だに茫然自失としたままのライゼンだったが、その掌が私の胸元の膨
らみに導かれるに至り、ようやく正気を取り戻したようだ。
「おやめ、ください……!」
 喉の奥から絞り出すような声だった。
「ふふ……どうして?」
 ライゼンの手は誘導されるまま、私の乳房の上にある。服越しではあるが、男には夢の
ような瞬間だろうに。
「あなたの好きなようにしていいのよ……」
 できるだけ甘ったるい声を作ってライゼンの耳元で囁いた。ライゼンは慌てて私の胸か
ら手を離し、頑張って理性を発揮してみせる。
「ラセリア様のお仕事は察しております。わたくしも生活に困るほどの薄給ではありませ
んがっ……断じてあなた様を買えるような立場ではございません」
 なかなか可愛いことを言ってくれる。確かに貴族の使用人ごときが高級娼婦を買うこと
などまず考えられまい。だが、問題はそんなことではないのだ。
「お金の問題じゃないわ……」
 私は口調を変えずにねっとりとそう囁き、片手を男の股間に滑り込ませていく。
「あなたとしたくなっちゃったの。素敵だったわよ、さっきのキス……ただでさえ発情し
てるときにあんな風にされたら、もう火がついちゃう……」
 吐息の端々からも熱を滲ませながら、私は男の欲望に油を注いでいく。男の股間を愛撫
する手を巧みに翻らせ、スラックスのファスナーをゆっくりと降ろしていく。ちりちりと
小さく鳴る金具が、馬車の中でやけに大きく聞こえた。
「や、やめてくださいっ……」
 ライゼンの声が必死さを帯びた。だが、その目の奥に期待の色があることも私は見抜い
ている。
「だぁめ。あなたがその気になるまでやめないわ……」




 くす、と口の端から笑いをこぼしつつ宣言する。口では抵抗しているが、私をはねのけ
てまで拒絶することもない。誘導した手は今もそのまま、胸の膨らみの上にある。
 こういう男は仕掛けてしまえばすぐに落ちる。引き下ろしたファスナーの中に手を差し
込み、慣れた手つきでその内側を撫でさすり、「男」の硬さを確認する。案の定、もう完
全に屹立している。このまま服の中に閉じ込めておいては可哀想なほどにだ。
「本当は私を抱きたいと思ってるんでしょう……?」
「とんでも、ない、です……!」
 言葉ではそう言うが、彼の体には力がまったく入ってない。ライゼンからキスで力を奪
い去ったのは事実だが、女一人を弾き飛ばそうと思えばできるだろうに。
「嘘は言わなくていいのよ。あなた、さっき薄給じゃないけど私を買えるほどじゃないっ
て言ったでしょう?」
 声の調子は相変わらずだ。欲望に絡みついて離れぬような囁きを続け、今度は男と体を
密着させていく。特に互いに接触した胸の感触からは、どうあがいても私の双丘を意識せ
ざるを得ないだろう。
「それって、つまり…んん……お金さえあれば、私を買うってことよね…?」
 あれは咄嗟に出た言葉だろうが、恐らくはライゼンの本音が無意識のうちに出てしまっ
たというところだろう。私を見た男はその気になるに決まっている。
「じゃあ、私がお金なんかいらないって言ったら? ねえ、どうするの…?」
 私にそう言われてやっと自分の本心に気づいたというところか。ライゼンは目を見開い
て愕然としていた。
 下着とスラックスの前開きから、男の硬くなった肉棒を手の感触だけで引きずり出す。
 同時に私は唇を男の首筋に這い回らせ、少しずつ頬を上へ上へと辿り、やがては耳にま
で達する。そこでこう刺激してやった。
「私にあなたの欲望を刻みつけてみたいと思わない……?」
 その言葉と同時にライゼンの耳朶を甘く噛む。その瞬間ぴくっと震える男の体に、私の
精神がゾクゾクとした高揚感を覚えてしまう。
「私もね……あなたに私の欲望を刻みつけたいの。どうしてだと思う……?」




 男の双眸と強引に視線を合わせる。この時、私と目を合わせ続けられる男などいない。
案の定ライゼンは視線を泳がせ、瞳もとろんと蕩けていく。
 これで私の優位は決定づけられた。男が主導権を握り返すことは、もうない。
「あなたが私とガイヤー様の関係を知っているからよ……でも、このことは秘密にしなけ
ればいけないの。誰にも、ね」
 スラックスを引き下ろしにかかっても、ライゼンは抵抗しなかった。かといって協力的
なわけでもないが、もうこの男は落ちている。すぐに下半身に何もつけていない状態にま
で脱がせばいい。後はもう私の思うがままだ。
「やめてください! 誰にも話しません! わたくしはこれでもシュベルン家に代々仕え
てきた使用人です。ですから決して……」
 そんな言葉とは裏腹に、股間から生えた肉棒は硬く勃起していた。準備はできているか
らもっと快感を与えてくれと訴えている。
 男の象徴は指と同様、並そのものだった。巨根でも短小でもないが、カリの張り出し方
はなかなか良い。女を絶頂に至らせるには充分だろう。
「政治家に代々仕えているのなら、わかるでしょう…?」
 私は指先で男の亀頭を包んだ。ライゼンはビクッと怯えるように震え、顔色を変えた。
「政治の世界は謀略と裏切りが当たり前……」
 指先でくりっと円を描かせ、一回り、亀頭のくびれをなぞる。
「だからこそ娼婦を呼ぶときも、あなたのような忠臣だけを使うのだけど……」
 今度はゆっくりと二回転。ライゼンが小さく呻いた。
「そういう人物から主人が寝首をかかれたら……?」
 今度は逆回しに一回転。早くも透明な液が滲み始めた。
「わかるでしょう? あなたがいくらガイヤー様に忠誠を誓っていても、政敵が彼を追い
落とすために、あなたに接触してくる可能性もあるのよ…?」
 しみ出した粘液を亀頭で滑らせる。最早ライゼンの目と口は半開きのままだ。意識はあ
るようだが、まるで糸が切れた人形のよう。
「巨額のカネを掴ませて裏切らせる――考えられない話じゃないわね」
 今度は焦らしながら三回転。「うっ……」というライゼンの喘ぎが、私の耳にだけ響く。
「秘密を知った人を黙らせるにはどうすればいいか……わかる?」
 にぃっと口の端が持ち上がり、邪な笑みの形に歪んだのが自分でもわかる。
 ぺろ……と唇を舌で湿らせ、熱のこもった言葉を繋ぐ。
「秘密をバラすことが不利益に繋がればいいのよ……」
 私は半ばライゼンにのしかかり、上から黒い笑みで見下ろした。
「あなたは私とガイヤー様の秘密を知ってしまったの。だったら黙らせるにはどうすれば
いいか……」
 もう自分の利益を守るためにこの男を籠絡しようとしているのか、それとも籠絡を目的
としているのかわからなくなってきた。
 けれどそんな状態になったときほど、私の妖しさは最高に艶を帯びたものとなる。面白
いことに、男も私の計略に一番落とされやすくなる。
 背筋と脳を痺れさせるような快感がぐんぐん強まってくる。男を掌の上で転がすことは、
それほどに楽しい。

「ふふふふ……あなたと私の間にも秘密を作っちゃえばいいのよね?」




 情熱的な行動とは対極の、冷酷な双眸で男の眼を射抜きつつ――私はライゼンを取り込
みにかかった。
 片手で巧みにドレスのファスナーを引き下ろし、軽く体を捩らせる。上半身の衣服はこ
れだけで重力に従い、するすると衣擦れの音を残して滑り落ちる。すると黒のブラに覆わ
れた乳房の膨らみと、対照的な白い肌が否応なく男の網膜に映し出される。
「どう? 興奮する?」
 花や蝶を思わせる丁寧な刺繍で演出されたブラジャーの下で腕を組み、乳房の谷間を強
調しながら男を挑発する。あごを上げて見下すような視線を作りながら、男の目がどこに
向けられているかを見極める。
「ふふふ……案の定ね。そんなに胸が好き?」
 ライゼンはそれまで胸元の膨らみと谷間を凝視していたが、私のこの一言で顔を背けた。
目も閉じてしまっている姿が、悪事を咎められた子供のようで可愛かった。
「この胸を好きなだけ触ってもいいのよ……?」
 私は後ろ手にブラのホックを外した。後はこの魅惑的な膨らみの全容をライゼンに見せ
つけ、彼をケダモノに変えて骨抜きにするだけだ。
 だが、ここで男の理性が最後の抵抗を見せてしまう。
「や、やめてください、ラセリア様!」
 いや、その理性が見せたのは抵抗ではなく、"弱点"だったというべきだろう。
「わたしにはもう妻と子供がっ……!」
 その言を聞いた私は更に興奮するだけだった。
 信じられない。昇り詰めてしまいそうなほど激しい高揚感が快感となって私を痺れさせ
てしまう。途端に下半身が熱を帯び、どっと潤みを増すのがはっきりと自覚できた。
「くすくすくす……うふふふふふ……」
 ライゼンの懇願は火に油を注ぐだけだった。隠した笑いをもう抑えられない。
 これでもう思い通りにこの男を操れる。そう確信すると、私の微笑はどんどん悪魔的に
なっていく。
「だったら尚更、好都合ね……」
 ライゼンのその抵抗は、灯火が消える寸前の輝きに過ぎない。ならば突風で消し飛ばす
のが礼儀というものだろう。
 想定以上に良い条件が揃ってしまった。私と関係を結んで負い目を作ろうと思っていた
が、男が妻子持ちとなればその口をより堅固にさせられる。
 不義、密通、背信、裏切り。そんな鎖によって私と彼は繋ぎ止められてしまうのだ。

「さっきよりずっと、あなたを可愛がってあげたくなったわ……」



 相手に家庭がある程度で留まるはずもない。下半身にだけ残ったドレスを脱ぎ捨てる。
ブラと上下揃ったデザインの下着姿を見せつけるようなこともせず、私はそそり立った男
の肉棒をすぐ口にくわえた。
「あっ……」
 声を上げたのはライゼンだ。
 口の中に入ったペニスを巧みに愛撫する。唇、舌、口内の粘膜を男根に吸い付かせ、呼
吸の吐息と絡ませながら強弱、緩急をつけるように快感を生み出させていく。
「ラセリア様……っ!」
 ライゼンの言葉にはもう諦念すら含まれているように思えた。私がこれほどの行為を続
けても抵抗を見せてこない。この男はもうここまでだ。
「ほら、どう…?」
 上目使いにフェラを続けながら、挑発するように訊ねる。
 ライゼンからの返事はない――が、その表情を見れば、感想など聞くまでもないことが
よくわかる。十数秒と経っていないのにもう溺れかけている。
 今まで数え切れぬほど多くの男が、けれど一人の例外もなく私の口で果ててきた。耐え
られる男などいるはずがない。
 それでも歯を食い縛って耐えるライゼンの姿を見ていると――彼の化けの皮を剥がした
くなってきた。
 理性で抵抗する男を本能に屈服させ、自分の精神がこの私に屈服したのだということを
思い知らせたくなってきたのだ。
 男のプライドをくすぐりながら理性と本能の葛藤を煽り立て、この真面目な男を手玉に
取ったら、どんな風に楽しませてくれるだろうか。
「ふふふ……ライゼン、あなたはどんな男なの…?」
 強く吸いついて絶頂に至らしめるのはたやすい。が、ここではそれを控えて焦らした。
 舌先を亀頭に這わせ、オーガズムの壁を限界で超えない程度に留めおきながら――男の
精神へと忍び入っていく。
「ガイヤー様みたいな…早漏とは違うでしょう?」



 途端にライゼンの顔が歪む。そこにあるのは男の意地…だけではない。
 生まれも育ちも立場もガイヤーには決してかなわぬライゼンが、唯一主人よりも上回る
ことのできる可能性を、その言葉から感じたのだろう。
「ガイヤー様は早かったわよ……昨夜なんか私に入れた途端にイッちゃったの。まるで童
貞みたいだったわ」
 にやにやと笑いながらガイヤーの劣位性を召使いの頭に刷り込んでいく。まあ私に言わ
せれば男なんてみんな早漏だが。
 むしろガイヤーより女性経験があるとも思えないし、この召使いが彼よりセックスが上
手いということもなかろう。
 けれどもこういう言葉を投げかけることで、男の価値の根源にある性的な能力を私に誇
示したくなるはずなのだ。
「主人より優れた男だと証明してみたくない?」――私の言葉の端々から、そんな問いを
浴びせられているように感じているだろう。
 そんな彼を葛藤させるのが妻子の存在だが、このオスの鼻先には極上の美女が釣り下げ
られている。果たしてどこまで耐えられるか見物だ。
「私の口や舌…気持ちいいみたいね?」
 押さえていた手を離しても、男の性器は天に向かってそそり立ったままだ。
 理性と本能の戦いを見抜いた上で、私は色っぽく囁いてみせる。
「発情してるんでしょう? この私に……ね?」
 もう認めちゃいなさいよ。そんな口調で落としにかかる。
 やはり舌先をペニスの先端に絡め、けれども裏筋やカリを刺激しないで焦らし続ける。
射精に至る寸前に留め続けることなど、私にとっては朝飯前だ。
「いいのよ、たっぷり葛藤してね。そのほうが気持ち良くなれるわ。あなたが私を押し倒
したくなるまで続けてあげる……」
 舐める度に唾液を絡め、ぬるぬるとした感触を強くしながら肉棒の先を愛撫し続ける。
 上目使いに見上げて男の表情をうかがう。圧倒的な快楽を与え、葛藤の天秤がどちらに
傾こうとしているのかを読み取りつつ、ライゼンに屈辱的な挑発を加えた。
「くすくすくす……なかなか強情なのね? ほとんどの男はここまででもう落ちちゃうん
だけど……」
 男が耐えれば耐えるほど、私は楽しくて仕方がなくなるのだ。
「どこまで奥さんに操を立てていられるか見物だわ……こんなに勃起してるくせにね」



 ペニスを握る手つきで男をバカにしながら、指先で軽く肉棒を弾く。この程度の侮蔑で
逆上してくれれば楽だが、どうやらそんな気配はまだない。
 男の気持ちなど手に取るように分かる。私を振り切らなければならないのに、肉体に走
る快感が圧倒的で離れられないのだ。
「ら、ラセリア様、もう、もう、おやめください……っ!」
 主に忠実な御者はうわ言のようなセリフで私を制しようとするが、その声もか細く、説
得力が余り感じられなかった。
 だから、私は余裕を持って反撃するのだ。
「本当に嫌なら…もっと本気で抵抗してみたら?」
 唇の端が持ち上がり、艶然とした雰囲気を作りながら言い放つ。
「力で弾き飛ばしてもいいのに、どうしてそうしないの? 男の力なら簡単でしょう?」
 実際そうしてきても構わないのだが――答えのわかり切った問いを逆に返すのだ。
 できるはずがないのだ。もうライゼンは私を抱きたくて抱きたくて仕方ないのだから。
「嫌だというなら、あなたはどうしてこんなに興奮してるの……?」
 フェラを続けながらの上目使いで問う。この視線の角度に男は弱い。
 顔を上げてライゼンの首筋をツツ……と舐める。情熱的な吐息を男の首筋から耳元へと
塗りたくり、更に情欲を駆り立てていく。勿論、この間は指先でくにくにと男の肉柱をし
ごき続ける。
「……今頃、奥さんはどうしてるんでしょうね?」
 瞬間、ライゼンの体がまたもビクンと震えた。
 この一言で男の頭の中には家族のことが走り巡るはずだ。
 いつものように仕事に向かった夫の帰りを待って食事などを作り、子供を育てて家庭を
預かる妻の姿でも浮かぶことだろう。
 なのにその夫と言えば、私のような娼婦に籠絡されつつある。一時の感情に流されて、
家族の思いや絆などを振り切ってしまいそうなのだ。しかも妻にすら見せられぬであろう
暗い欲望に火をつけて、だ。
 一念発起したのか、ライゼンは私への抵抗を強めてきた。ぐっと強い力を込めて、覆い
被さる私の体を起き上がらせた。なかなか理性の強い男だ。
「いけません、ラセリア様。私は妻を裏切れない……」
 ……そろそろ持ち上げてから落とそうか。
「優しい旦那様なのね……奥さんが羨ましいわ」
 性器をしごく手を止め、私はライゼンの顔を見据えた。この仕草から愛撫が止まるのか
と思ったのか、彼からは安堵の色がうかがえる。
 勿論、やめるはずなどない。
「ふふふ……ねえ、ここから白いのを噴き出しても、まだそんなことが言える?」
 言えないよね? 言外に有無を言わさぬ挑発を交え、肉棒を握る手の圧力を強めた。
「おかしいと思わない? こんなに私で勃起してるくせに妻のことを考えるなんて…無様
としか言いようがないけど?」
 絶頂にはギリギリで至らない程度に裏筋を撫で上げ、亀頭を這い回る舌で、じわじわと
染み出す透明な液を広げていった。
「ほら…今までとは違うでしょう?」
 愛撫の性質を変える。男を焦らす、ぬるま湯的な愛撫から一転。昇り詰めさせるための
攻めへと技を披露していく。
「男の感じるところなんて……もう知り尽くしてるんだから」
 亀頭、カリ、裏筋……一擦りする度、醜く充血したペニスに浮き出た血管の上を這い回
る私の白い指先が、男の理性を破壊しにかかる。
「うわ、あっ、ぐ……」
 声にならない声で男が喘いだ。ビクンと腰を引いて体が硬くなる。肉棒下部の玉がせり
上がって射精への準備を整え――


「駄目よ……まだイかせてあげない」


 後は出すだけ、というところで私は手を離した。
「あ…う……」
 妻への気持ちを守り切れた安堵と、射精できなかった不満が入り混じった顔だった。
 あと一擦りもすれば果てたであろう。今は懸命に耐えようとする下半身が、体の芯から
噴き上げようとする精液を抑え込もうと奮闘している。
 こういうのを見ていると、出してしまったほうがずっと楽になれると思うのだけど――
男にとって、裏切らずに済んだかどうかは射精の有無によって決まるものらしい。馬鹿げ
た話だと思うけど。
「ふふふ…私と奥さん、どっちのことを考えてたの?」
 再び豊かな乳房の膨らみだけを男の胸板に押し付け、指先を亀頭の上だけで滑らせてい
く。無論、イキそうでイけない――そんな絶妙さは崩さない。
 ライゼンは問いに答えない。もう自分でもわからなくなっているのだろう。精液を出し
てしまいたい、けれども出したら一瞬で快感が失われてしまう。家族を裏切るわけにもい
かない――これらの感情が交錯し過ぎ、けれど極上の快感を送り込まれ……もうまともに
順序立ててものを考えることもできまい。
「もっと家族のことを考えなきゃ……駄目よ?」
 男の耳元でねっとりと囁き、真っ赤になったライゼンの顔と戸惑いの瞳をじっくりと堪
能してから、更に男の性欲を煽動していく。
「頭の中を、妻と子供でいっぱいにしてね……」
 体をずり降ろしながら乳房を男の胸板に這わせていく。先ほどの抵抗が最後の気力を振
り絞ったものだったのか、それとも射精を耐えることで精一杯なのか、ライゼンはもうさ
れるがままだった。
〈落ちたわね……〉
 私の双眸もすっと目尻が下がる――もう少しこの男の心を料理してやろう。
「こんなこと、経験ないでしょ……?」
 ライゼンの顔に微かな疑問符が浮かぶ。何が未経験だと言っているのかわからない、と
いったところか。
「駄目だとわかっていても、興奮して勃起してしまうなんて……ね?」
 侮蔑のニュアンスを込めて囁くと、ライゼンはその瞬間だけ歯を食い縛る。悔しいけれ
ども、私に絡めとられて抵抗できなくなっているのだ。
「もうわかってるでしょうけど…あなたをイかせるなんて造作もないの。男を満足させる
テクなんてもう全部知ってるからね……」
 掌で肉棒を包み、するすると上下の往復を繰り返す。指先がカリのくびれを通り過ぎる
度、忠臣の御者は体を硬くして我慢してみせる。
 しかし、もうこれは抵抗と言えるだろうか? 射精したら快感も絶頂に達するものの、
その瞬間に男の快感は消失してしまう。私にはそれを嫌がる男の悲しい葛藤のようにしか
思えなかった。
 そんな悲しい葛藤はもっとある。それをキーワードにして男を嬲る。
「口先ではどんなにカッコつけても、ペニスをこんなに硬く勃起させてたら説得力なんか
全然ないわね。本当、男って悲しい生き物だと思わない?」
 今度はぎゅっと欲望の柱を握り締めてみた。軽く痛みさえ覚えてしまうほどに強くだ。
「認めなさいよ、私で勃起したことを……ね?」
 男の目に恐怖の色彩がさっと走った。認めてしまうことが妻への背信だと思い込んで疑
わないその表情……ゾクゾクする。
「昨夜のガイヤー様、早い上にテクも薄くってさ……物足りないの」
 ホックを外したままブラは体にまとわりつかせていたが――いよいよ肩紐からするりと
落とす。途端に釘づけになるライゼンの視線を意識しながら、私はゆっくりと見せつける
ように、ブラを外して乳房を晒してみせた。

「どう? 完璧でしょう…?」




 並み外れた豊かさを誇りながら、決して垂れていない極上の膨らみ。左右対称の見事な
造形美は、この美しい形をそのまま保ちたいと思わせるが、同時に男を暴走させ、自分の
モノにしてメチャクチャにしてやりたいと思わせる魔力も持っている。
 上向きで張りのある膨らみの先端にある敏感な突起も、まるで欲情済みであるかのよう
に微かに勃起しているように見えよう。
 別に興奮して勃っているわけではない。私の乳首は平均より微かに高さがあるだけで、
男に触られればもっと扇情的な姿を見せるようになる。
 男の好みに適合する薄桃色の乳輪も、乳房全体のバランスを崩すような大きさはない。
むしろ小さく控えめな花を咲かせているように見えるだろう。まさに男の偶像を体現した
乳房だという自信がある。男が釘付けになるのも当然だ。
 言葉で男を嬲るのだから、口での愛撫は差し控えたい。
 だから私は――男の眼前でぷるぷると震える二つの乳房で、ライゼンの興奮し切った勃
起を挟み込んだ。
「う…あ…ああっ!」
 途端にまたライゼンの体が硬直し、射精の兆候を見せる――が、まだイカせない。
 挟んだだけで愛撫には至らない。寸前で彼も我慢してくれた。もっと胸の谷間と言葉で
男を弄ぶのだ。
「今頃、奥さんと子供…心配してるかもしれないわね。帰りが遅いお父さん、どうしたの
かなって……」
 ペニスを挟んだ乳房の膨らみを左右交互に上下させる。心なしか更に肉棒が硬度を増し
たように思えた。
「そのお父さんはこうして今……妻とは違う女を相手に、射精したくて仕方がない……」
 乳房の谷間からはみ出した亀頭を舌先でからかい、更に心の裏側を呼び覚ましていく。
女のように喘いでしまうライゼンの苦しみと快感が手に取るようにわかった。
「ふふふふ……男なんてみんな同じね。妻子がいると言っても所詮は口だけ……こうして
コレを勃起させてるのがあなたの本性なのよ」
 私はそう男を罵りながら、ペニスを挟んだ胸をくねらせた。ぬるりとした先走りの液が、
もっと大きな快感を求めて分泌されてくる。
 ライゼンの顔はもう、生きた人間のものではなかった。
「お……おやめ、ください、ラセリア様……っ!」
 最早彼が意識の中でそう制しているのかも怪しい。崩れかけた堤防を直すために決壊さ
せるしかない矛盾がそうさせている。
「もう破裂しそうね…もっと気持ち良くなりたいでしょう?」
 そろそろフィニッシュを迎えさせてあげよう。これ以上いじめるのも可哀想だ。
 男の本能と理性の間での戦いに、決着をつけさせるための快楽を彼に送り込む。

「気を失うくらい気持ち良くしてあげる……」



 鼻にかかったかすれ声で囁き、私は欲望の柱を包む豊乳を激しく交互に動かした。快感
が途切れぬように、合間に埋まった肉棒へと悦楽の奔流を流し込む。
「うっ!」
 途端にライゼンが体を仰け反らせ、身を硬直させて腰を引こうとした。男が限界を迎え、
本気で射精を回避しようとする反応だった。
 勿論狭い馬車の中で私に密着されているから、離れることもままならない。これでもう
抵抗はできないのだ。
 男の肉棒の先端を乳房で圧迫しつつ、谷間深くに埋めたその瞬間――
「うああっ!」
 哀れな獲物が呻いた。今までよりも激しく肉体を硬直させ、身をピンと張って全身に快
楽の絶頂がほとばしるのを受け止めている。
 その快楽の反応が現れるのは下半身だ。私の柔らかな胸元で、ペニスが激しく痙攣しな
がら白い情熱を射ち放ち、乳房の峡谷に熱くて粘る流れを作り出した。
 二度、三度、四度……肉棒がビクビクする度に、谷間に流れる白濁の量は増していく。
吐き出される量はやはり並みというところだが、谷間に打ちつけられる精液の勢いは凄い。
私のパイズリが男をそれだけ狂わせたということだ。
「ふふ……ついに出しちゃったわね? 家族を裏切ってしまった気分はどう?」
 胸元を這い下りる精液を指先ですくい取り、ゆっくりと口元へ運んで舐め取ってみせる。
私自身も恍惚とした表情を浮かべ、男の理性を打ち砕いた自分の魅力に酔い痴れた。
「背徳感すらも快感だったでしょう……?」
 未だ収まる気配のない勃起を掌で愛撫しながら、絶望でいっぱいの男の顔を覗き込み、
私は優位に立った者の持つ冷笑を見せつけた。
「しかも妻の中より、私の胸の谷間のほうがずっと気持ち良い…と思っちゃったでしょ?
あっははははっ!」
 谷間に残る白い精液をライゼンの前に晒しながら嘲笑う。こんな屈辱的な経験などした
ことがあるまい。このとき、男の目は虚空を泳ぐだけと相場が決まっている。
 あれだけ激しい射精ならば、男にも並み外れた快楽が与えられている。ましてや私の卓
越した技巧に並の女の膣ごときがかなうはずもない。一瞬でも妻より気持ちいいと思って
しまったのならば、それだけで男は罪悪感を覚えずにはいられないのだ。
「でもよく耐えたわね…あなたなら余りの快感に気絶しちゃうと思ったんだけど。そんな
に経験豊富でもなさそうだったしさ」
 私は座席の体面に座ってライゼンを見据え、余裕の微笑を浮かべて挑発してみる。
「ふふふ、坊や……これでもう終わりじゃないでしょ?」
 言うまでもなくライゼンのほうが私よりも年上だ。が、私に手玉に取られる男なんて、
みな子供と変わらない。敢えて「坊や」と呼んで優劣の位置を強調する狙いがある。
 ブラジャーと同様に豪奢なレースの下着の腰紐を解く。局部を覆う布切れは手を離すだ
けで、ファサッと小さな音を残して床に落ちた。ガーターベルトとストッキングだけが残
された姿態は、全裸よりも艶めかしく映ることだろう。
 そうして私は横たわったままのライゼンにまたがった。激しい射精の後に弛緩した男の
肉体で、唯一硬直したままのペニスを下の口へとあてがった。
「あなたを弄んでるうちに興奮してきてね……もう溢れるくらい濡れてるの。前戯なんか
もう必要ないわ。今から中に入れさせてあげる……」
 ガイヤーの命を奪った私の膣の快楽……同様にこの男の口を封じることもできようが、
そこまでする必要もない。私の肉体で黙らせれば充分だろう。
 この男は妻への背信行為を共有することで、私と繋ぎ止められるのだから。
 ゆっくりと腰を落としていくが、ライゼンはもう逆らわなかった。たった一度の射精だ
が、彼にとってそれはただの射精ではなかったのだ。守らなければならない最後の一線を
破壊された衝撃と罪悪感は計り知れないダメージだったのだろう。
 だとすればもう、この男はもう落ちていくだけである。



 抵抗などほとんど感じない。それほど滑らかに男の欲望が私の下半身へと浸透していく。
ぬるぬるとした愛液の潤滑に導かれるように、私の中へと男根が潜っていった。
「いつでも好きな時にイっちゃいなさい……」
 邪悪な笑みを浮かべて腰を落とし切る。肉棒が内側の粘膜をえぐるのが心地いい。
 根元まで挿入し、中が埋まった感覚にふるふるっと体を痙攣させ、男を上から見下す。
「が…う、あ……」
 耐えている耐えている。沈没寸前のようだがなかなか見上げた根性だ。並の男などこの
時点で果てる。が、妻への思いと執念がここまで堪えさせているのだろう。
「くすくすくす……おめでとう。ガイヤー様より長持ちするみたいね。あなたの主人はも
うこの時点でイッちゃったんだから」
 といっても私が少しでも膣を締めるか、腰を振れば一瞬で果ててしまうだろう。
「この世界でも、私の中は飛びっ切りの男泣かせだからね……こんなの初めてでしょ?」
 果たして彼にこの言葉は聞こえているだろうか。絶頂に至るのを我慢するだけで精一杯
といった風だが。
「中が…動いて……うあああっ……」
 辛うじて聞こえていたようだ。いや、もしかしたら快感の余り、無意識に漏れたうわ言
かもしれない。なかなか好ましい反応だ。
「ふふふ……そろそろ楽にしてあげるわね」
 上から冷たく言い放ち、軽く腰を浮かせる。男がその動きを目で追っているのを確認し
つつ――ウエストから下だけをくねくねと前後させる。
「ぐ、あああああっ!」
 そのアクションと同時にライゼンの下半身が弾けた。一度射精した後なのに衰えを知ら
ない肉棒が、即座に女を求めて白い液を噴き出した。膣内で棒がびくびくと震え、じんわ
りと生温かいものが満ちていく。

「あっははははっ! 主人も早漏なら召使いも早漏なのねぇ? 手加減してあげてるのに
五秒と持たないなんてね。情けないと思わないの?」



 腰を振りながらライゼンを言葉で攻め立てる。あごを仰け反らせながら喘ぎ声を上げ、
我慢しようと身体を突っ張らせながら抵抗するライゼンの表情は、まさにSの私にとって
理想の表情を見せてくれていた。
 妻以外の女との性交なんて許されないのに、体が快感を求めて悶えてしまうことへの罪
悪感、妻を裏切ってしまったことへの背徳感、女にあっさりイカされてしまう敗北感、し
かも年下の女に理性を破壊し尽くされる屈辱感――それらがすべて混じり合い、眉根を寄
せながらの苦悩と葛藤、けれども圧倒的でリアルな悦楽に身を焦がされて気持ち良くなれ
る悦び……最高の顔だった。
 そんなものを見せられたら私も興奮してしまう。結合部を湿らせる淫らな液は、絶え間
なく分泌されて私とライゼンとのセックスを歓迎していた。私の腰の動きもまるで衰える
ことを知らず、男根を悦ばせては絶頂へと導いていく。
「あっ、あっ…あああ! もう駄目、出る、出るっ……!」
 再びライゼンが歓喜と絶望の混じった声を上げて果てた。男の欲望がどくどくと震えな
がら、また私の膣に注ぎ込まれていく。
「ふふふ、いいわよ、いいわよライゼン! もう中で二度も出しちゃったんだから、後は
もう何回ヤッても同じことよ!」
 私の勢いは止まらない。上半身は反動で揺れる乳房が、そして男を悦ばせるよう巧みに
動く下半身が、私という女に棲みつく魔獣のように男根へと絡みついて搾りとる。

「このまま私の虜になりなさい……妻とのセックスごときで満足していた過去の自分が、
馬鹿らしくなるような快感を教えてあげるわ…!」

 直後にまたライゼンは絶頂を迎え、激しい悦楽に喘ぎながら私の中で白濁を射ち放った。
 膣口の感触でわかる……もう入れてから三度目の射精だというのに、出る勢いと回数が
まったく衰えない。ライゼンが必死に耐えるからこそ、決壊は激しくなるのだ。
 こうして男を都合四度の昇天へと導いた後、腰使いを静かに止めた。膣内の締め付けも
少しずつ緩め、ただ男のモノを中に収めただけの状態に戻していく。
〈ふふふ……このくらいやればもう充分でしょうね〉
 私が男を抱いたような状態だが、まあいいだろう。本当はライゼンが能動的に私に手を
出してくるのが理想だったが、短時間で四度も射精したなら言い訳の許される余地などあ
るまい。
 男の理性も粉々にしてやれたし、サディストとして結構楽しめたセックスだったな――
などと振り返る余裕すらあったのだが。
「あんっ……!」
 突然の快感。反射的に私の口から色気を帯びた声が漏れた。
「え…な、に……?」
 胸元から脳へと走る快感のシグナル……私の意図したものではない。
 となると考えられるのは――
「ライ…ゼン……?」



 私の乳房はライゼンが伸ばした両手に握られていた。
 男は無表情の中に悲壮な決意と暗い欲望を潜ませ……いや、そんな葛藤に満ちた心境で
はない。これはただの自暴自棄だ。
 後はもう何度出しても同じ――ついさっき私がライゼンに言い放った言葉だ。今になっ
てようやく肉体と欲望に火がついたのだろうか。
 ならば私もライゼンと同様、自分の表情と内面に違う顔を浮かべればいい。
「……ああん……ん、はぁっ…」
 男の手が私の胸を弄ぶ。体の中を流れる電流に身を任せ、女の悦びへと身を浸す。
 まるで未知の快感を味わう乙女のような戸惑いと快感に悶える表情を浮かべつつ、しか
し心の中で私は笑う。余裕と挑発と嘲笑と、そして物事が思い通りに運んでいくことへの
歓喜に笑うのだ。
 オスの本能を悦ばせ、狂わせる嬌声を上げ、欲望をさらに刺激しながら、今度は私が快
感の渦へ飛び込んでいく。
 娼婦として、あるいは女として数多の男に磨き抜かれた私の身体は、オスの欲に晒され
ようと決めてしまえば、簡単に忘我の淵へと落ちていける。男の愛撫に極めて鋭敏に反応
する、とても感じやすい肉体へのスイッチが入ってしまうのだ。
 そしてこのとき男の理想通りに、面白いように悶える私の痴態は、彼らを私に溺れさせ
る切り札にもなる。
「あっ、ああっ、あああっ……あぁん…!」
 男がこれまで味わったことのない快感を私で味わうのと同様に、「今までこんなに激し
く感じてくれる女など見たことがない」――そんな姿を男に見せるのだ。
 喜ばない男はいない。どんなに仲睦まじい夫婦や恋人同士であろうと、私のような悶え
方のできる女などいやしない。そしてそんな私を見たら、もう男はこれまでの女で満足す
ることなどできなくなるのだ。
 ライゼンが身を起こした。騎乗位から対面座位へと移り、私の乳首を口に含んだ。
「あああっ!!」
 ぶるっと身を激しく震わせた私の口から、一際甲高い喘ぎ声が上がる。
 身を走り抜ける快楽は本物だ。決して演技ではない。
 いや、演技ではないけれど――こんな職業を続けていると、どこまでが演技で、どこか
らが自然な反応なのか自分でもわからなくなってくる。
 私自身が把握し切れないのだから、男に見抜けるはずもない。
「やん、ああん…気持ちいい……胸、感じるの…続けて……」
 たとえようもなく甘ったるい声が自然と漏れる。理性をかなぐり捨て、はあはあと息を
荒げ、ケダモノとなったライゼンの舌先が私の乳首を舐めていく。
「ああっ……! はあん……あああっ…!」
 稚拙とまでは言わないが、やはりセックスも並というところだ。特筆すべき快感もない
が、まったくのテクなしというほどでもない。
 だが、それでも私の肉体はオーガズムへ至る道筋へと入っていた。求められる肉体と反
応を返す感度は、男のみならず自分自身をも昇らせていく。
「んんっ……あんっ…んう……」
 私の反応を気に入ったのか、ライゼンは一心不乱に私の乳房を揉みしだき、舌先を激し
く動かして私の乳首を転がし続けた。
「ああんっ……いい! はああん……あっ、あああああ!」
 更に跳ね上がる私の喘ぎ。並の女ならこの反応は絶頂に至った時にしか見せられまい。
それでもまだ道半ばに過ぎない私の悶えは、このあたりから男を驚愕させ、更なる興奮の
予感へと導いていくのだ。
「この程度の愛撫でこれほど凄い反応を見せるのならば、この女をイかせたらどんな風に
乱れるのだろう」――男はそのような思考を心に浮かべるのである。
 となれば彼らは意地でも私をイかせずにはいられない心境となる。こんな最高の美女が
乱れ狂う姿を見ることができなかったら一生後悔してしまう――そう思ってしまうのだ。
 たとえそれが、妻への裏切りや背信という枷を嵌められていたとしても、だ。



 今度は私がライゼンに翻弄される番のように見えるだろう。もしそこに観測者がいるな
らば、だが。
 対面座位で乳首を舌先で撫でられ、もう片方の乳房を余りの手で揉みしだかれ、下半身
を下から突き上げられ、動物のような声で男から与えられる快感に溺れている女――外形
的にはそんな状況にしか見えまい。
 しかし実情はまったく正反対だ。私は悪魔のような笑いを浮かべて男を嘲弄し、対する
男はもう退路を失ったがために自暴自棄になり、己を更なる窮地へと追い込んでしまって
いるのである。
 欲望に負けた男が自分の意志で私との不義を求め、妻との信頼の鎖を断ち切ってしまう
――そんな状況を作り出すのが理想だった。裏切りの鎖だけではなく、罪悪感と良心の呵
責が更に男を縛りつけるからだ。
 ライゼンはやけになって私に欲望をぶつけてくる。まさに私が望んだ展開だった。
 余りにも思い通りで、心中での高笑いを抑えることができない。激しい高揚感が性的な
興奮をもたらし、私の局部は湿りを決して失わなかった。ほぼ勢いだけで突いてくるライ
ゼンの腰使いと、身体に流れる性感に喘げばいいのだから楽なものだった。
 満足するまで射精した後、男がどんな顔になるのか容易に想像がつく。出し尽くして性
欲が急激に冷めたライゼンは頭を抱えるに違いない。
「自分はなんということをしてしまったのだ」と後悔するのだ。究極的には自分から激し
く私を求め、やることだけはやっておきながら、数秒前までの自分を嘆くのである。
「あああっ……! もう駄目…こんなにされたらもう駄目っ! んんぅっ!」
 ほとばしる快感に悦楽の反応を返していたら、唇が急に塞がれた。ライゼンの口唇が私
のと重なっていた。間を置かず男の舌が割って入って私のそれへと絡みつき、劣情のまま
に貪ってくる。
「んん……ん、んああん……あ……あ、あ、ん…はあああんっ!」
 私を昇らせようとする快感が途切れない。濃厚なキス、そして下から突き上げられる対
面座位の上下運動もさることながら、仰け反って快感を受け止める私の顔を追い詰めるよ
うに追いすがられ、ライゼンに唇まで奪われる……気持ち良かった。
 これが欲望に身を委ねた男の末路だ。理性を盾にして抵抗する男は少なくない――が、
私には欲に塗れた醜さを隠そうとするためのポーズにしか思えない。
 私を前にした男たちはそんな演技などすぐにやめてしまう。欲望に狂って堕ちていくそ
の姿こそが、男たちの本性――剥がされた仮面の裏側なのだ。
 だが、心の中でライゼンを嘲弄するのもここまでだった。
 欲望に火がついたのは男だけではない。私の肉体も十二分に燃え盛っていた。
 濃厚なキスを交わしながら乳首を舌先で転がされ、豊かな乳房を揉まれ、肉棒で膣内を
えぐられる――複数の性感帯を同時に攻められ、私の体もぐんぐんと昇り詰めようとして
いたからだ。
 こうなると脳は神経に絶頂の快楽だけを送り届けるための回路と化す。頭の中にはまと
もな思考の余地すら残せない。
 男の理性を破壊した後、今度は私の理性が破壊されるのだ。
〈もう駄目……イッちゃう、イッちゃう……!〉
 きっとライゼンの妻もこんな対面座位でイかされているのだろうな、などと思った直後。

「もう、イク……イッちゃう! あぁあぁぁぁあぁああああーっ!」

 一瞬の浮遊感の後、私の頭の中は究極の悦楽で真っ白になるのだった。



「はあっ……はあっ……ん、はう…」
 息が乱れ、呼吸が整うのには時間がかかった。絶頂の余韻はなかなか抜けない。適温の
湯船にたゆたうような快感はゆっくりと引いていく。
〈何度経験しても……オーガズムって飽きないわね……〉
 性の絶頂は神様からの贈り物だろうか。これほどの快感をいくらでも味わえるなんて、
女に生まれてよかったとさえ思ってしまう。
 次第に快感が抜けていき、さて、男はどうしているかと思うまでに戻る。
 私が昇り詰めたのとほぼ同時に、また射精したことは間違いないだろう。今もなお男の
ペニスは私の中に挿入されたままだが、イッた私を更に攻めてくるような気配はない。
〈……あれ?〉
 男の体から力が抜けている。ライゼンは後ろに倒れ込んでぐったりとしている。対面座
位はいつの間にか騎乗位になっていた。
「おかしいわね」
 まだ男の肉体を破壊してしまうような快感は与えていない。ガイヤーを殺した時とは違
うのだ。今回のセックスでは私がただ絶頂を迎えただけである。
 なのにもう男の体に力がない。普通は今後、何度も私に果てさせられるのだから、耐え
るために全身を硬直させて我慢する、というレベルのはずだ。
 まさかと思って確認をとってみた。けれど心臓が止まっているようなこともなく、手首
からは脈も感じられる。けれど白目を剥いて口を半開きにしたその姿は、明らかに意識を
喪失していて……。
「ったく、これだから女慣れしてない男は……」
 ライゼンは快感の余りに気絶していた。まだ一桁しか射精してないくせに。やれやれ。


 しばらくしてライゼンが呻いた。ようやく意識を取り戻したようだ。
「ねえ、大丈夫?」
 努めて優しい声をかけ、彼の顔を覗き込む。
「あ、う……ぐ…?」
 ライゼンは目を白黒させて頭を押さえた。快感で気絶したことなどないのだろう。
 とはいえ彼も記憶は残っていよう。だから、どんな状況だったのかはよく覚えているは
ずだ。私の顔を見て、さっと怯えのような表情が走る。
 だが、ここで私が顔に貼り付けるのは、先ほどまでとは一変した情愛の笑顔だ。男をた
ぶらかし、悪魔のような嘲笑を絶やさなかった魔女とはもう違う。
 男が意識を失っている間、下着や服をきちんと身につけ、乱れた髪なども身綺麗に整え
ておいた。今の今まで男の上に脚を広げてまたがり、淫らに腰を振っていた女と同じ人物
だなんて信じられなくなる男もいるだろう。
 もっとも、薄絹を内側から押し上げる乳房の自己主張や、スリットから覗ける長い脚の
艶めかしさに私の真実があるのは変わらないのだが。
 男の体から半ば剥ぎ取ったかのように脱がせた服も畳んでおいた。彼の意識がはっきり
としたところで、たおやかな笑顔を作って渡してやる。
「はい、忘れちゃ駄目よ。今のあなた、だらしない格好なんだから」
 手渡しながらクスクスと笑ってみせる。そこに不穏な気配は感じさせない。それどころ
か仲睦まじい恋人や夫婦のやり取りのように感じるだろう。
「あ……ありがとう、ございます…」
 だからこそライゼンはこんな抜けた返事までしてしまうのだ。
 男が服を身につけ、そこそこの格好になったところで、私は魔女に戻る。
「ライゼン、こっちを見なさい」
 それまでの優しい声から一転、突き放すような命令調で宣告する。
「は――はいっ…!」
 ようやく思い出したのか、トーンを落とした私の声にライゼンはビクンと反応した。
 振り返った男の視界には、先ほどまで自分を翻弄した悪魔のような女の姿が映る。容易
には信じられまい、一人の女の雰囲気がこれほど変わることなど。
「あなたと私は会わなかった」
「……え?」



「聞こえなかった? あなたと私は会わなかった。そうよね?」
 私は声のトーンを少しずつ沈めて宣言していく。
 だが、それでもライゼンは意味がわからなかったようだ。昨日は国境から馬車に乗せ、
今日は目の前に私がいる。なのに「会わなかった」とはどういう意味だろう、と。
「いい? 何があっても――繰り返すけど、"何があっても"、よ? ――私とあなたは会
っていない。それを貫きなさい。
 国境まで私を迎えに来てもいない。私をこうして十四番通りまで送り届けた事実もない。
ガイヤー様から命令も受けていない。だから私の存在すら知らない。それでどう?」
 そこまで言うと、ようやくライゼンも事態を呑み込めたようだ。
「わ…わかり、ました……」
「もう一度だけ言うけど――"何があっても"、よ?」
 ライゼンは私に気圧されたのか、うなずくのみだった。私はその反応に満足し、腕と脚
を組み替える。そうして深くなった乳房の谷間と、組み直される美脚の付け根へとライゼ
ンの視線が一瞬だけ泳ぐのを確認し――私はこう言った。

「奥さんには言わないから」

 その瞬間――ビクッとライゼンの体が、確実に震えた。
「ふふふ…そんなに恐がらなくていいのよ? 誰にも言わないから。ね?」
 性戯で翻弄した時よりも、ライゼンの顔は激しい苦悶に満ちていた。
 この男とて理解はできよう。額面通りに信じられる言葉ではない。私はライゼンの心に
くさびを打ち込んだのだ――「裏切るな」と。
 もし裏切ってしまったならば、私はライゼンとの肉体関係を暴露し、彼の家庭を崩壊さ
せてやる。そういう脅しなのだ。
 不義の秘密を共有することで私とライゼンは繋ぎ止められる。いや、私が一方的に縛り
つけたと言ってもいい。
 嫌でも思い出すに違いない。妻のことを考えながらも激しく私に興奮し、何度も果てさ
せられた性交のことを。次々と沸き上がるであろう罪悪感と背徳感に駆られ、ただでさえ
重くなる口を、更に私の脅しが縫いつけるのだ。
 本当に黙っているかどうか、もうしばらくこの男を監視する必要もある。だから、再び
会ったときに私の体を求めたくなるような魔法をかけておく。
「あなたの身体、なかなか良かったわよ。ガイヤー様との夜よりずっと気持ち良かったわ。
次はもっと激しく愛し合いましょう……ね?」
 私はライゼンに抱きつき、またも耳元で妖しく囁き、その頬に唇を軽く押しつけた。
 唖然としたままのライゼンの瞳を覗き込む。警戒の中に確かな陶酔の色を確認し、私は
笑ってみせた。
「あと二時間は帰っちゃ駄目よ? 香水の匂い、残ってるからね?」
 ライゼンはかぁっと頬を赤くして、私から目を反らした。



 そうして男を懐柔して馬車を降り、十四番通りをホテル・グランスターへ向けて歩き出
した。
 勿論、背後は振り返らない。もう用はないと背中で見せつけながら、私は唇の端を持ち
上げて笑った。
 最後の言葉で「次」があることも匂わせておいた。魔法はこれで充分だろう。
 何しろ真面目な男の背信だ。今日のことを思い出す度に興奮と勃起と罪悪感が抑えられ
まい。帰宅して妻と子供を見た瞬間に、その三つが大挙して押し寄せてくるだろう。
 だからこそ今夜は妻を懸命に抱くのではなかろうか。申し訳ないという思いで、まるで
罪滅ぼしであるかのように。
 だが、すぐに気づくだろう。そのとき、自分が妻に挿入しているモノは、彼女にではな
く私に対して勃起しているのだと。気づけばもっと罪悪感が募り、ますます激しく妻を求
めるようになる。
 けれどもそこでまたも愕然とするはずだ。どんなに妻を思っても、味わう快感は私との
セックスのほうがはるかに上だということに。
 もし彼が多少なりともMの気質を備えていたらもっと深刻だ。年下の女に翻弄された屈
辱や、セックスでまったく及ばず、ただ一方的にイカされた敗北感が快感となってライゼ
ンを襲う。
 もしそうでなかったとしても、主のガイヤーより優れているとされた自分のセックスで
私を満足させたくなるはずだ。
 社会的な立場、収入、評価、経歴、抱いた女の数――どれをとってもライゼンはガイ
ヤーにかなわない。それでも男として主人より何かひとつくらいは上回っていたいと思っ
ているはずだ。
 それがセックスともなれば最高だろう。本当は性戯など価値の一面に過ぎないのだが、
男にとっては違う。彼らにとって何よりも高い価値が置かれているのは、セックスの能力
なのである。
 意外なところで男の意地に火をつけられたことに彼は気づくだろうか? 気づいたとし
ても、実は私によって思考が操られているに過ぎない……というところまで悟り切れるか
どうかは極めて怪しいが。
 余りにも強烈な性感を与えてくれる美女が、自分のセックスを大いに激賞して自分のプ
ライドを満たしてくれる――ともなれば、男はすぐ夢中になる。
 そんな中で彼は私との関係を続けながら、いずれは自分を正当化し始めるだろう――
「俺はこの女に脅されて、仕方なく肉体関係を結ぶのだ」と。
 自分の意志で私との関係を求めるようになればなるほど、そんな正当化を強くしていく
だろう。他者に納得されない関係が深まるほどに、人は自分自身への言い訳を欲するよう
になるのだから。

 これだけ魔法をかけておけば、「何があっても」今日のことは黙して語るまい。そして
その「何があっても」の本当の意味を、彼は帰宅後すぐに知ることになるだろう。
 ネーディア市の有力議員ガイヤー・シュベルン、突然の死――その報とともに、暗殺の
噂もすぐに流れ出す。
 誰が犯人なのかすぐ気づくのはライゼンだ。側近の彼も警察から事情聴取を求められる
かもしれない。だが、その度に「何があっても」の意味を思い出すのだ。
 肉体で繋ぎ止められたこと以上におののくだろう。私が殺人を厭わぬような人種である
ということに。
 となれば迂闊に真相を話せば、自分と家族の命が危機に晒されることも悟るはずだ。
 もし彼がそれでも勇気、いや、蛮勇を振り絞り、主人の仇討ちとばかりにすべてを話し
てしまうようなことがあれば――
「そのときは……別の手段で黙ってもらえばいいのよね」
 秘密を知った人間を黙らせるには、処罰の恐ろしさで繋ぎ止める他に、もうひとつの方
法がある。
 私は戯れに手刀を首筋に置き、それをスッと横に滑らせた。
 死人に口なし。余計なことをしゃべるのは生きているモノだけだからね――と心の中で
つぶやき、私はニヤリと笑ってホテル・グランスターへと入っていった。



                                          THE END
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