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射撃戦隊ガンレンジャー(番外・前編)

作者:XXXR氏
備考1:女幹部
備考2:「まだ途中までだけれど、続きも必ず投下する」(作者氏)



「え~と、じゃ、読み上げますよ……
佐々木燕はナイトメア・ワンス・モア(以降NOM)対策課職員として以下の規則を遵守すべし。
1.NOMとの戦闘には必ず参加する。例外は認められない。
2.招集には必ず応じる事。例外は認められない。
3.大鷲大学の講義、行事等を欠席してはならない。例外は認められない。
4.週に100時間、自宅にいるか、もしくはNOM対策課職員と共に行動すること。例外は認められない。
5.上記四つの義務の内、NOMとの戦闘を最優先事項とする。例外は認められない。
尚、以上五つの項目を遵守している場合に限り、佐々木燕に巡査長相当の警察権の行使を認める……だとさ」
「何だ、意外に緩いな」
あっけない幕切れを迎えた決闘から一夜明け、佐々木燕は自身の処遇について、種子島大介から説明を受けていた。
「……いや、これ緩いか?」
平気な顔で返事を返してきた燕に、大介は疑問を投げかける。彼の目から見て、この規則はあまりにも無茶苦茶なものに感じた。


「仕事はきちんとしろ、学校は休むな、規則正しく生活しろ……という事だろう? 別に特別な事が書いてある訳ではない」
「いや、そう言えば聞こえはいいけどさ。オレ等にはこんな規則無いぞ。多分、お前を監視し易くするために、お前用に作ったんだ」
「当然の判断だな。私は司法取引で仮初めの自由を得た凶悪なテロリストだぞ?」
「じゃあ、コレはどうなんだよ」
大介は持っていた書類を燕に向け、何度も繰り返される一文を指差した。
「最後にくっついてる『例外は認められない』ってやつは?」
「それも含めて、だ」
「本当にいいのか? 何があっても戦闘には出なきゃいけないし、大学も休めないって事だぞ? 病気になったり、怪我したり……親が死んだりしても」
「不毛だ」
突然、燕がぴしゃりと言い放つ。
「この話題は不毛だ、大介。それは確かに就業規則としては異様なものだろう。だが、だったらどうした? お前が待遇の改善を上に掛け合ってくれるのか?」
「それは……うぅ……」
燕の言葉を聞き、大介は返事に窮する。
彼女の言う通り、自分はただ文句を言うだけで、別にこれを改善しようなどとは考えていなかった。それに、もし誰かがそうした所で、彼女への待遇が変わる事などない、ともわかっている。
そもそも、燕がこうやって大学に通い、自宅に寝泊まりする現在の生活を続けられる事自体、破格の待遇と言っていいものなのだ。
「とにかく私は気にしていない。それでいいじゃないか。それに……」
燕はふと目を逸らし、窓の外を、その先の、どこか遠くを見る目をした。
「たとえ親が死んだとしても、私が葬式に出る事はないよ……向こうもそれは望まないだろうしな」


その後の細々とした手続きも終わり、燕は一度帰宅することになった。「監視役」として大介も同行する事となり、彼女の家に向かう。
「立派な家だねえ」
着いた場所は威厳ある門構えの、和風住宅だった。正に剣術道場に相応しい邸宅と言えるだろう。
燕は門の横にある小さな戸を開け、大介も後に続く。石畳の道を途中で左に曲がり、玄関らしき戸を開けると
「ただいま」
と軽く言って、さっさと靴を脱いでいく。一方で大介は「え~と、おじゃましま~す」と何故か申し訳なさげに体を小さくしながら、玄関で立ち往生していた。
と、そこに奥から女性が現れる。
「お帰りなさい、燕。あら、そちらは……」
現れたのは着物を着た、落ち着いた雰囲気の女性である。そこかしこから重ねた年月を感じさせるものの、しゃんとした背筋と凛とした顔立ちの美女であった。
「母さん、大介だ。以前にも話しただろう?」
燕の紹介に合わせて、大介もぺこりと頭を下げる。話を聞いた燕の母は、嬉しそうに破顔した。
「あら、貴方が大介さん? 良く来てくれましたね。さ、上がって下さいな。今夕食の支度を……」
「母さん」
母の言葉を、燕が突然遮る。
「夕食は外で食べてきたからいい。父さんに挨拶したらすぐに部屋に行く」
「……そう、残念だわ。ゆっくりしていって下さいね」
笑顔を少し曇らせて、燕の母は奥の部屋……居間らしき所へと戻っていく。燕の方はさっさと大介に背を向け、さらに廊下を進んでいった。
「え、あ、ちょっと待てってば!」
ここに来てようやく靴を脱いだ大介は、慌てて後を追う。廊下の突き当たりの部屋に燕が入ったのを見ると、ノックをしてから襖を開ける。

そこから聞こえてきたのは、悲しげに響く金属音。漂ってきたのは、どこか懐かしい、鼻につんとくる香り。

「ただいま、父さん」

部屋の中で佐々木燕は、仏壇にむかって挨拶をしていた。





渡り廊下を渡って道場……正確には「元」道場に入ると、以前は事務室だったと思われる部屋に通された。今はここが、燕の私室だと言う。
見回せば味気ないデスクの他にも、簡素なキッチンや冷蔵庫等がある。奥には畳が敷かれ、型の古い小さなテレビや、畳んだ寝具が置かれていた。
「ほとんどのものは父が生前に設置したものだ。稽古の後の子供達に、料理を振る舞ってやりたい、汗を流させてやりたい、と言ってな。ああ、向こうにシャワーもあるぞ。大体の事はここで何とかなるから、住み易くていい」
そう語りながら燕は布団を敷き、ぴしっと伸ばしたシーツを被せると、その上に腰を降ろす。しばらくの間沈黙が続いたが、やがてどこか寂しげに語り始めた。
「私が初めて竹刀を握ったのは、もう随分幼い時の事でな。6才辺りからは記憶にもはっきり残っているが、その頃にはもうあまり負けた覚えがない。唯一勝てないのが、父さんだった」
手を伸ばして本棚からアルバムを取り出すと、附箋の付いたページを開いて見せる。一応許可を取ってから大介が覗き込むと、そこには一組の男女が写っていた。
悔しそうな顔の涙目の少女と、対照的に豪快な笑顔を浮かべた男性。互いに剣道着に身を包んでいる。これが当時の燕と、彼女の父なのか。
「涙目とか……正直意外だな」
「それだけ悔しかったのさ。何しろ他の奴には負けた事が無かったからな」
そう言って少しだけ笑う。今ではすっかり良い思い出のようだ。
「この頃は何とかして父に勝とう、とそればかり考えていたな。挑んでは負けて、また挑んではまた負けて……そうしてあっというまに六年過ぎたが、とても楽しい日々だったよ。……あの頃はまだ、な」
その顔が、再び陰る。
「突然、本当にある日突然だった。何の前触れも無く、私は父に……勝ってしまったんだ」

「いつも通りの日だった。いつも通りに起きて、ランニングがてら登校し、授業を受け、友人達と談笑しながら下校して、そして父に勝負を挑み、父はいつも通りそれを受けて……。
そうしたら負けた。あっさりと、昨日もそうだったようにな」
そう言いながら、燕はアルバムのページを捲っていく。次に見せられたのは、成長した燕と、彼女の父の写真。
しかしそこに写っていたのは、茫然自失といった目をした彼女と、どこか困ったような笑みを浮かべた父親だった。
「今思えば、成長期というやつだったのだろうな。今までの練習の成果と、身体の成長が合わさって、その日偶然父に勝てた。それだけの事だった。
だが当時私は、父を遙かな高みにいる絶対的な存在の様に考えていてな。信じられなかったんだ。一生涯をかけても登れないと思っていたその高みに、それだけの事で辿り着けるなんて」
はらり、はらりとページを捲る燕。それ以降どこにも、二人が一緒に写っている写真は無かった。
「父さんは数日間道場を休んだが、復帰すると修行に打ち込むようになった。門下生達が帰っても、ずっと道場で竹刀を振り続けていたよ。
いつの間にか事務室に布団を持ち込んで、そこで寝る事も多くなった。その内無理がたたって身体を壊し、そして……」
最後のページにあったのは、竹刀を肩に乗せ、笑みを浮かべた燕の父。大介にも、何となくわかる。この写真は、恐らく。
「父の遺影だ」
燕がゆっくり写真を撫でる。まるで、写真を通して父親に触れようとしているように見えた。
「父が死んだ日も、私は外でくだらない諍いの最中でな。結局、葬式にも行かず終い。親不孝な娘だよ」
アルバムをぱたり、と閉じて本棚に戻した。
「父の最後の言葉、何だったと思う?」
「……?」
「また、アイツに勝ちたかった……だ、そうだ。年端もいかぬ小娘に負けたのが、よっぽど悔しかったと見える。……そうだ。私が勝たなければ、あんな事にはならなかったんだ」

「私が勝たなければ、私が強くなければ、父はあんな最後を迎えることもなかったのではないか。そんな事をつらつらと考えていたら、いつの間にか葬式は終わっていたよ。気付いたときに私がいたのは暴力団の事務所で、組員達は皆気絶していた」
それが初めて、彼女が「裏社会」と関わった瞬間だった。
当時はもう既に道場、格闘家、不良と一通り勝負してしまっていたため、恐らく不良の次、一段階上のステップとして単純に暴力団を選んだのだろう。
しかしそれ以降、彼女の勝負はどんどん過激なものとなる。より大きく、より悪名の高い組織を襲い、本物の生きるか死ぬかの戦いを行う。
やがてドクトル・シャドウによってNOMに迎えられ、粛正係として様々な化け物どもとすら死闘を演じた。
それでも素人のはずの彼女は、常に勝利し続けたのだ。
「多分、負けたかったんだ、私は。誰かに、私は強くなどないと否定して欲しかったのだと思う。でも勝ってしまうんだ。戦っても戦っても、私を負かす奴は現れてくれない。
……そして誰かを倒すたびに思うんだ。良かった。父はこんな奴よりも弱い男ではなかった、とな」
父を死なせた自分の強さを、誰かに否定して欲しいという思い。そして、自分に負けた父の名誉を守るため、誰にも負けたくないという思い。相反する二つの気持ちのせめぎ合いを、大介は感じたような気がした。
「ひょっとしてさ、オレを鍛えたのは……その、自分で作ろうって思ったのか?」
燕はこくり、と頷いた。


なるほど、と大介も頷く。
敵である自分を強くするような行為を、何故行ったのか。彼女の正体に気付いてからずっと疑問だったが、やっと答えが出た。
相反する二つの気持ちを両方解消する方法は一つ、「負けても父の名誉を傷つけない相手と本気で討ち合って負ける」事だ。
それには不良ややくざ者の類ではだめだし、ましてや化け物どもなど以ての外だ。かといって今更自分の相手をしてくれる道場もジムもない。よしんば相手が現れたとしても、その相手が自分に勝てるかは疑わしい。
「そんな奴をただ待つよりは……という訳さ。それに、父も弟子だった私に負けた。その私が自分が育てた男に負けるなら、因果と言うものだろうしな」
「期待には応えられたか?」
「期待以上だったよ」
大介の質問に答え、燕は寂しそうに笑う。
「まあ、父がどう思うかは……やはりわからないがな」
そして再び、沈んだ顔になってしまった。



そのまま沈黙が続く。そんな中で、大介は大介なりに、先ほどの話を理解しようとしていた。
どうやら、彼女がひたすら戦いを求め、テロリストにまでなったそもそもの原因は、亡き父親との微妙な不和にあるらしい。いや、不和というのも何か違う気がする。
どうにも、彼女が父親を語るときの言葉に、納得のいかないもやもやとしたものを感じる。家族の事情に立ち入るのは失礼とも思ったが、思い切って口を開いた。
「なあ、お前はオレに負けたんだよな?」
「ああ」
「それで、負けた気分は?」
「実に清々しい」
「だろ? オレもそうだ。前にお前にボロ負けした時だって、なにくそ! とは思ったけどさ、別にお前のことを恨んだりはしてない」
そう、むしろあの時間は、かなり充実していたと言っていい。確かに多少無理をしたかもしれないし、その事でハナビに心配もかけてしまった。しかし、あの頃の自分を突き動かしていた気持ちは、決して恨みや憎しみのようなものではなかった。
「……お前のお父さんだってさ、そうだったとは思わないのか?」
「………」
「お前に勝ちたいって言ってたのだってさ、もっとこう、男の意地っていうか、親の沽券っていうか……」
「………」
「……あ~上手く言えない! とにかく!」
大介は燕の両肩を掴み、ぐいっと自分の方を向かせる。
「あの言葉はお前が思ってるような意味じゃないし、お前のお父さんはお前を嫌ってなんかいなかったし、お前がお父さんのこと気にする必要もないの! ……だと、思います」

「………」
「………」
「………」
「………」
「……もしかして私は、励まされたのか?」
「……多分、そうだと思う」
「そうか」
燕はそう言って大介の背中に手を回し、ゆっくりと胸に頭を埋める。大介も少し戸惑ったものの、そのまま彼女を受け止めた。

よく聞こえなかったが、ありがとう、と言われた気がした。


「……しかし」
おもむろに顔を寄せ、燕が口を開く。
「女の傷心につけ込むとは、お前もなかなかだな」
「えっ!?」
びっくりして、思わず燕から離れてしまう。
「しかしまあ、中々悪い気はしないな。それで、どうするんだ? 大介」
「いや、どうするって?」
「わからないのか? 鈍いな……」
いつの間にやらにやりとした笑みを浮かべ、何故か四つん這いで燕が近づいてくる。
そして大介の耳元で、殊更声を低くして囁いた。

「こんな時間に男が女の部屋に上がり込んでいるんだぞ? 私の方は覚悟は決めてあったんだがな。……さあ、どうする。据え膳食わぬは男の恥、だぞ?」
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