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4-73

作者:4代目スレ33氏
備考1:諜報員×女幹部
備考2:男が受け

 その部屋はあまり広いとは言えず、彩る家具も質素なものだった。金属製の硬いベッドがひとつ、いろいろな道具が置かれた机がひとつと、簡素な造りのパイプ椅子がやはりひとつ。それだけだ。
 その椅子に、男がひとり座らされていた。自分の意思で座っているわけではない。それは、椅子の背もたれに縛られた後ろ手を見れば明らかだ。
 この部屋には彼以外に誰もいない。
 年の頃は二十代前半。精悍な容姿の持ち主で、剥き出しの上半身は鍛え上げられ、獣のようにしなやかな筋肉の鎧を纏っていた。
だがその雰囲気には疲労が色濃く、眼の下にはクマが浮かび、吐く息は重苦しい。
 藤堂宗一という名のこの男がそのように疲弊している理由は、ここ数日の拷問によるものだった。
睡眠など許されていないので意識は朦朧となり判断力は鈍り、苦痛によって汗ばんだ肉体には無数の打撃や火傷の痕が刻まれている。
 宗一は、政府直轄のとある組織の諜報員だ。その主な任務は、敵対する組織に対する潜入工作。平たく言えば、スパイだ。
少年時代から血なまぐさい生き方しか知らなかった宗一にとっては、慣れ親しんだことだった。そしていつものように潜入した先の組織で、いつものように任務を進めて、
 しかしいつもと違ったのは、自身の正体が周囲に露見してしまったことだった。
 近年、改造人間や怪人などを運用した破壊活動によって大きく世界を騒がせている国際的テロ組織《ヘルファイア》。
その警備は非常にレベルの高いものであり、機密情報を盗み出そうとした宗一はすぐさま捕獲されて、《ヘルファイア》の基地内にある、この拷問部屋に放り込まれたのだ。
 この基地などは各地に点在するものの中でもけっして重要なものではないのだが、それでも宗一には荷が重かったのか。
 任務に失敗したことを、宗一は痛感していた。そして彼のように血と硝煙のにおいがとれない人種の世界では、失敗は速やかな死を意味する。
 幸か不幸かまだ死んではいないが、時間の問題に違いなかった。むしろ、さんざん嬲られて地獄を味わわされるよりは、いっそのこと一息に殺されたほうが幸せなのかもしれない。
 宗一の尋問を担当している男は、明らかなサディストだった。下卑た笑みを浮かべ、無抵抗を強いられた虜囚に向かって鞭を何度も何度も執拗に振り下ろし、
 自分が吸った煙草を胸や顔などに押し付け、まともな食事はおろか水さえも与えずに何日も過ごさせている。
それらの行為によって宗一から情報を聞き出そうとしているというよりは、自らのサディスティックな欲望を満足させたいがための行動であると思われた。
 けっして殺してはならない、そしてすべての情報を聞き出すまでは過度の虐待を禁ずる、という命令が下っていたことは、おそらく幸いなのだろう。
 そうでなければ今ごろ宗一の顔は殴打によって膨れ上がり、耳や鼻は削ぎ落とされ、歯は抜かれ、両手足の指はなくなっていただろうから。
 だが、そういったものを想像して覚悟を決めていた宗一にとっては、逆に拍子抜けするほど生ぬるい拷問となっていた。
 それを疑問に思いつつ、なんとかしてこの窮地から脱出する機会をうかがっている。絶望するのは、まだ早い。
 とはいえ、仮に上手く逃げおおせたとして、失敗した工作員を温かく迎える場所があるのかといえば、それはそれで絶望的なことなのだが。
 そのとき、うつむいて目を瞑り、ほんのわずかな時間の休息を得ようとしていた宗一の耳に、この部屋唯一の扉が開く音が聞こえた。
 十分ほど前に何者かの呼び出しを受けて立ち去った尋問担当の男が、戻ってきたようだった。ということは宗一は手の縛めを解けば逃げ出せたのかというと、そうでもない。部屋の外には見張りがふたりいるし、監視カメラもいくらでもある。そうそう簡単にはいかないのだ。
 果たして、扉を開けて入ってきたのは、宗一にとって予想外の人物だった。
 ゆるやかに波打つ金髪を長く伸ばした美女だった。年齢は、宗一よりも少し年上に見える。怜悧な美貌の顔立ちだけではなく、豊満な乳房と、くびれた腰、そしてすらりと伸びた足という、完璧なプロポーションの持ち主だ。
 名前を、テスラという。彼女は《ヘルファイア》の幹部――そして、宗一にとっては上司にあたる存在だった。宗一の内通が発覚するまでは。
 テスラはすました調子で言う。
「ご機嫌はいかがかしら」
「……悪いよ」
 久しぶりに出した声は、ひび割れてしわがれていた。
「そう。食事を持ってきてあげたわよ」
 言葉どおりに、その手はコップと小さなパンを乗せたトレイを持っている。
 テスラは宗一のことをほとんど警戒している様子もなく、つかつかと歩み寄ると、しゃがみこんで宗一の口元へ無造作にロールパンをねじ込んだ。
 まだ口も開いていないのでロールパンはひしゃげただけだ。宗一はそれに対して非難するような視線を向けたが、空腹には勝てず、口を開いた。
 しばし、室内にはパンを咀嚼して水を飲み込む音だけが静かに響く。
 食べ終わってから、宗一はしまったと思った。なんの躊躇もせずに口にしてしまった食事だが、どんな薬物が混入されているかもしれないのだ。迂闊だったと口惜しく感じる。
 そんな宗一の考えを表情のわずかな変化から読み取ったのか、テスラが言った。
「変なものは入れてないわよ」
 どこか悲しげな様子だった。
 しかし、そんな些細な様子は、立ち上がったときには消え去ってしまっている。
「これからは、あたしがあなたの尋問を担当するわ」
 テスラは、机の上にあった道具のひとつを手に取った。鞭だ。気の強そうな彼女が持つと、まさに女王様という雰囲気である。
 しかもこの女王は、怒りで口元をゆがめ、憎悪すら発しているのだ。
「はじめる前に訊いておくけど。あなたを雇っていたのは、だれ?」
「知らんね」
「あっ、そう。まあ、いいわ。――それにしても」
 と、言いながら、テスラは鞭を振るった。ひゅん、という風を切る音と共に加速した先端は、宗一の肩を強く打つ。強烈な打撃音と痛みに、目眩すら感じていた。
「あたしとしたことが、まんまと騙されたわね。見事だったわよ、あなたは」
 間髪入れず、もう一度、鞭が振り下ろされる。今度は反対側の肩に。かと思えば、腕に、頬に、胸に、ところかまわず赤いみみず腫れが刻まれていく。
 それでもうめき声ひとつ上げないのは、さすがだに訓練されているからだろうか。それとももはやそんなこともできないほどに消耗してしまっているのだろうか。
 執拗に攻撃を繰り返された宗一はもちろん辛そうだったが、テスラとて、終わったころには息を荒げていた。激しい運動には慣れていないのだろうか。
 冷然とした余裕を取り繕いながら、虜囚を見下す。
「……ふん。それで、どうだったの」
 宗一が、なにが、と問い返す暇もなかった。
 今までの鞭よりもずっと重い一撃が、宗一の頬を張り飛ばしていた。
 痺れる手の平を再び掲げて、テスラは叫ぶ。
「なんにも知らずにあなたの言葉を信じて舞い上がってた間抜けな女は、さぞかし笑える見世物だったでしょうねえって言ってるのよ!」
 肉を肉が打つ渇いた音が、連続して鳴り響く。
 《ヘルファイア》に参入してから無難な成果を上げつつ頭角をあらわしていった宗一は、自然とテスラの目にとまった。そして彼女の部下になり、そこでも順調に彼女を支え、そしてやがて上司と部下という関係だけではなくなっていた。
 ベッドの上で、年下の恋人の胸に身を預けたなら、テスラはいつも幸せそうだった。そのときに口にするのはいつも他愛のないことばかりだったが、言っている方も訊いている方も楽しかった。
 テスラと宗一が将来を約束したのは、そうした他愛のない話のひとつだった。それでも、テスラは信じていた。だが、裏切られた。――それでも、信じていたかった。
 やがて、平手打ちの応酬がやんだ。宗一はずっと無言で、その仕打ちに耐えていた。
 不意に、テスラが、くずおれるようにして宗一の胸に飛び込む。
 彼女は、泣き崩れていた。
「……っ、ふぐぅ……ううっ……」
 宗一はなにも言えない。ただ黙って見守るしかなかった。震える彼女の体を優しく抱きしめてやりたくても、拘束されているからできないし、また、そんなことをする資格もないことは知っていた。
 五分も経っただろうか。テスラは顔を上げずに言った。
「お願い。これだけは教えて。あたしのこと、本当は、どう思っていたの。愛してくれていたの?」
 答えることができなかった。
 自分にとってのテスラとは、いったいどういう存在だったのか。愛する恋人だったのか。
 いや、そんなはずがない。宗一はそういった甘い錯覚を即座に振り払った。
 もちろん、任務のために利用していただけだ。幹部という地位にある彼女と親密な関係を築き、任務を遂行しやすいようにしただけだ。
 テスラとの関係など、そうでなくては成立しなかった。そうに違いない。
 けっして、あのとき感じていた安心や愛しさは本心からのものではなく、きっとただの幻想だったのだ。
 だから宗一はこう言った。どちらにしても、こう言うことが正解なのだ。
「いや。愛していなかった」
 胸をつかむテスラの指に力がこもり、爪が胸板を引っかいた。鋭い痛みが走り、血がにじむ。たいした痛苦ではない。だがつらい。
 顔を上げたテスラは、泣きはらした瞳を向けてくる。
「うそ」
「うそじゃない」
「うそよ。分かるもの」
 突然、唇を重ねられた。口内に進入して自在に動きまわる舌を、宗一は抵抗せず受け入れる。厚く、濃厚なキスだった。いつもふたりでしていたように。
 長い蹂躙の後、離れたテスラは初めて笑った。先ほどまでの取り乱しようが嘘のように、思わずぞくりとするほど妖艶だった。
「いいわ。そうやってしらを切るつもりなら……先にそっちを白状させてあげる」
「な、なんだって?」
 耳元に口を寄せて囁く。
「この部屋のカメラは外しておいたわ。外の見張りも追い払った。だから、覚悟してね」
 なにが、だから、なのか。その答えはすぐにわかった。
 ぐい、と右手で掴んだのは、宗一の股間だ。ズボン越しに、強い力で握られて、思わずうめき声を上げてしまう。
 それを面白がって、テスラは好き勝手にそこを握った。ときには潰すつもりなのではないかというように、ときには撫でさするように。
 強弱をつけて刺激していく。すると、みるみるうちにそこは当然の反応を示してくる。
 美女は嬲るように笑う。
「こんな状況だっていうのに、ずいぶんと節操がないのね」
 こんな状況だというのにこんなことをしているのはおまえだ、と宗一は言いたくなったが、口を開く前にテスラは次の行動を起こしていた。
 宗一の股間の前にひざまずくと、ジッパーを下ろし、慣れた手つきで中身のペニスを取り出した。
 窮屈な場所から開放されたペニスは、喜びのためか、ぶるんと勢いよく飛び出して打ち震える。
 いきり立って天を向いたそれは、まるで肉の記念碑だ。
 テスラは人差し指の先で、性器の先端を小突いた。すると血管を浮かび上がらせて興奮しているペニスは素直に反応を返し、
 主人の意思とは無関係にビクビクと情けなく震える。五日ぶりの刺激は、ただでさえ敏感なそこをさらに過敏にさせていた。
 指の腹で亀頭を撫でまわすだけで、裏筋を下から上になぞるだけで、宗一の腰が浮き、ペニスは面白いように跳ね回る。
 そして、
「っ、ああっ!?」
 何の前触れもなく、先端の割れ目にある小さな穴――鈴口に、爪の先が針のごとく突きたてられた。
 鍛えようのない急所の、もっとも弱い部分に、的確な一撃。これにはたまらず悲鳴が上がる。
 さらに容赦なくぐりぐりと穿られては、どうしようもなかった。
「やっ、やめっ――」
「やめてほしいの? 喜んでるように見えるけど」
 諜報員とはいえ、宗一とて、そのあたりの一般人やチンピラなど一蹴できる力がある。
 鍛え上げられた全身を見れば、それは一目瞭然だ。だというのに、反撃することもままならず、女の指先ひとつで好き勝手に弄ばれていた。
 生かさず殺さず、痛めつけて傷つけず、そうやってたっぷりと楽しんでから、テスラはやっと指を離した。宗一も安堵してため息をつく。
「なにかしら、これは」
 そう言ったテスラの指先を濡れ光らせているのは、ペニスの先からにじみ出た先走りの汁だった。それは今もなお、ペニスの根元から尿道を駆け上って、溢れ続けている。
「こんなにカウパー出しちゃって。やっぱり喜んでいたのね。愛してもいない女にこんなことされて感じていたの?」
 宗一はなにも言えなかった。というか、テスラの色香と迫力に圧倒されつつあった。
「言いたくないなら、べつにいいわ。言わせてあげるから」
 ペニスを温かいものが包み込んだ。と、感じたときには、すでにテスラに飲み込まれたあとだった。根元まで一気に口に含まれ、吸われる。
 カリ首を舌先がつつき、舐め、次に幹を嫌というほど刺激される。ぬるぬるとして温かい快感が下半身を痺れさせて、宗一の理性を奪っていった。
 拷問の最中は、当然、風呂に入って体を清めることなど許されない。だから自然と宗一のペニスは汗と垢と排泄物の残滓で汚れていたが、
 そんなものなど気にする様子もなく――いや、むしろそれを好んで味わうかのように、テスラはしゃにむにしゃぶっていた。
 宗一はそれを嬉しく思う反面、汚い部分を披露することに羞恥を感じもする。そのような感情がさらに興奮と快感を際立たせ、
 何日も我慢を強いられていた彼のペニスは、あっという間に屈服した。
「テスラ、もう出るぞ……!」
 腰をひくつかせて宣言した後、亀頭を膨らませて射精した。テスラが口を離す暇もない。いや、そんなつもりなどなかったのか。吐き出される精液を喉の奥に受け止める彼女の瞳は潤み、恍惚としていた。
「んはぁ……美味し……」
 どろどろとして粘る白濁を苦労して飲み込むときでさえ、幸せそうだ。
 その様子を見ていると、愛しさばかりがこみ上げてくることに、宗一は驚かなかった。最初から気づいていたことなのだ。
 だが、テスラを愛していると認めてしまうと、任務に私情を持ちこんだことになる。
 そんなことではプロ失格だ。それは自分のアイデンティティまで揺るがすことに繋がる。
 そして、なにより、これ以上自分との関係を続ければ、テスラの立場を悪くするだけだと思った。
 しかし、そんな理性的な判断にこだわっていられないほど、今の宗一はテスラの技術に酔わされ、愛と肉の欲の虜にされていた。
 だから同じく発情したテスラが、
「ね。あたしのこと、愛してる?」
 と訊いたとき、思わず首を縦に振ったのだった。
「ああ。愛してる」
 歓声を上げて、テスラは勢いよく宗一の胸に飛び込んでいった。
 キスの雨を浴びながら、宗一は諦めの境地に達し――それでもどこか満足げだった。
 スキップでもしそうなほど上機嫌で廊下を歩くテスラの姿を、構成員たちは訝しげに見送っていた。
 部下の裏切りによる上層部からの厳しい責任の追及を受け、
 ここ数日は近寄りがたいほど荒れていた彼女だったが、どうやらなにかいいことでもあったらしい。
美しいがそれ以上に恐ろしい上司の機嫌は、悪くないほうがいいに決まっている。
 下級構成員たちは胸を撫で下ろしてほっとしたのだった。
 宗一の愛を確かめたテスラの機嫌はすこぶるよかったが、現状に満足しているわけではなかった。
 宗一がスパイだという事実は動かしようがないのだ。彼の処遇については、今でこそテスラに任されているが、
 いずれ近いうちに彼女よりも位の高い幹部がその役目を横取りするだろう。
 そして彼は処刑される。
 むごたらしい拷問を加えられた後で、冷酷に殺されるのだ。
 そういった末路をたどった輩を今までにいくらでも見てきたから、テスラの心には焦りが生まれていた。
 宗一を死なせるわけにはいかない。そのために、どうすればいいのか。一番なのは、彼をどうにかしてこの基地から逃がすことだろう。
 だが、どうやって。警備は厳重で、下級幹部に過ぎない自分がそのチャンスを作れるとは思えなかった。
 だが、なんとかしなければ。
 宗一はテスラに迷惑をかけられないからと脱出に乗り気ではなかったが、そんなことなど関係なかった。どうにかして。
 どうにかして、彼を逃がさなければならない。
「例のスパイってのは、どこにいる?」
 天使の声で、心臓が凍りつくかと思うようなことを言われたのは、そのときだった。
 テスラの目の前には、いつのまにか少女がひとり立っている。まだ十代後半にしか見えないというのに、
 小娘には決してない色香を誇り、どこまでも凄絶に美しかった。
 何の冗談のつもりかブレザーの学生服など着ている。
 短くボーイッシュに整えられた黒髪は、クセがあるものの、艶やかな濡れ羽色だ。
 整いすぎるほど整った顔立ちには東洋人の特徴があるものの、その猫のように愛らしい瞳が毒々しい赤に染まっているのはどういうわけか。
 いったい、いつの間に現れたのか。いくら思案に没頭していたとはいえ、テスラとて仮にも幹部のひとりだ。
 こんな小娘にやすやすと接近を許すはずなどなかった。
 この少女が、ただの小娘であるならば。
 テスラは最初こそ唖然として対応に遅れたが、我を取り戻してからの行動は早かった。
 ひざまずき、こうべをたれる。
 テスラは幹部だが、下級もいいところの弱小幹部だ。
 この基地の中の地位にしたところで、決して高いとは言いがたい。
 そんなテスラが、《ヘルファイア》のナンバースリーであるこの少女と対等に振舞うことなど、許されるはずがない。
 搾り出した声は震えていた。
「キリエ様……も、申し訳ありません。呆けておりました」
「なんでもいいから、質問に答えろよ。あと、立て。邪魔だろ」
「は、はい」
 どうしてこんな大物が、こんなところにいるのだろうか。テスラのような下層階級からすれば、雲の上の人物だった。
 話したこともなければ、名前すら覚えられていないだろう。
 上からしてみれば、自分などは雑兵と変わらないのだ。
 だというのにテスラがキリエの姿を知っていたのは、大規模な集会の際に遠目に見たことがあったからだ。
 テスラの頭は完全に混乱を極めていた。それでもどうにか宗一がいる拷問部屋の位置を教えることができたものの、
 胸の内では不安ばかりが増大していく。
「ずいぶんと、その、急なご訪問なのですね」
「視察っていうんだろ、こういうの。ただの気まぐれだ。たまには幹部らしいこともしなくちゃな。……なんだよ。なんか文句あんのか」
「いえ、そんなことは」
 文句は大有りだった。
 まずい。せっかく何日もかけてこの基地の責任者を説き伏せて、自分が尋問の担当になったというのに、いきなりすべてをぶち壊しかねない存在が現れた。
 これからこの少女の姿に化けた悪魔は宗一に会って、それでどうするつもりなのだろうか。きっと拷問する。それも、まともなやり方ではない。
 自分などでは考えつかないほど凄惨できちがいじみた方法により宗一の身も心も破滅させた後で、寸刻みにして焼き払うのだろう。
 そうに違いなかった。そしてしかも、それをとめることは自分にはできないのだ。
 だが、せめて少しでも時間を稼がなければならない。
 テスラはできる限りの笑顔を作った。
「キリエ様。あのようなむさくるしい場所などお気になさらずとも、そ、そうです、パーティーなどいかがですか?」
「ぱーてぃー?」
「ええ。お酒もお食事も上物をご用意します。この基地のシェフは優秀ですよ」
「……ふうん。いいかもな。腹も減ってきたし。ところで――」
 安堵しかけたテスラと唇を重ねそうなほど近い距離で、静かに言った。
「口がザーメンくせえな、おまえ。……さっきまで、なにやってた?」
 テスラは女性としては長身の部類に入るが、キリエの背はもう少し高い。のぞきこむように、痛いところを突かれて、テスラはごくりとつばを飲み込んだ。背中にじっとりと冷や汗が浮かぶ。
 フェラチオによって宗一を満足させたが、精液を飲み込んだのは、テスラにとって失敗でしかなかった。
 キリエの嗅覚をはじめとした身体能力は、人類の領域を軽々と超越している。
 テスラの口から漂う青臭い臭いには、おそらく最初から気づいていたはずだ。
「おまえ、名前はなんていったかな。下賎ごときの名前なんぞいちいち覚えてられねえから知らんのだが」
「テスラ、と申します……」
「例のスパイも、たしかそんな名前のやつの部下だったような気がするな。で、さっきまでなにやってたんだ」
「そ、その裏切り者の、尋問を」
「ふうん。へえ。ほう。そうかそうか。なるほど」
 耳元まで裂けた口で笑うキリエは――そんなはずはない、動揺のあまりの幻覚だとテスラは自分に言い聞かせた――なにがそんなに楽しいのか、実に愉快げだった。
 終わった、とテスラは思った。
 自分と宗一との関係を気取られたに違いない。どうしてスパイを拷問するのにフェラチオなどする必要があるのか。
 他の男のものだと言いつくろっても、およそ幹部が行うにふさわしいとは言えない馬鹿な行為には変わりがない。
 失脚は免れない。もしかしたら処刑もあるかもしれない。二重の意味で、終わりだ。自分の人生、そして宗一の人生も。
「ところで、酒はどこだ酒は」
 ――諦めかけたというのに、キリエの様子は完全に反転していた。やはり口は裂けてなどいないし、邪悪な雰囲気もない。
 さきほどまでとはうってかわって、食事のことしか頭にないようだった。
 その変わりように拍子抜けしたテスラだったが、なんにせよ、興味が他のところに向いてくれたのは嬉しいことだ。気を取り直して、彼女を食堂に案内するのだった。
 キリエが人知れず舌なめずりしたことなど、この世の誰にも分からなかった。

 夜中も昼と変わらず、宗一は室内に閉じ込められたままだった。変わったことといえば、手首の縛めを解かれ、椅子から開放されたことだ。
テスラが彼のためになんとかしてやれたことといえばそれぐらいのものだったが、それだけでもありがたいことだった。
 背に感じるベッドの感触は硬く、寝苦しいが、椅子に座ったまま夜を明かすよりはずっといい。それに、好きなだけ眠れるというのも大きな進展だ。
さすがに熟睡することは状況が許してくれないが、休息は十分にとることができるようになった。
 この独房には時計などありはせず、外の時間を知らせてくれるのはひとつだけある小さな窓だけだ。
蛍光灯の電源を落とされた今となっては、あそこから漏れる月光だけが唯一の光源。
 見れば、今夜は満月だった。
 テスラと同じくこれからのことについて思案する宗一の表情は、険しい。
 彼女は宗一を助けるためならなんでもすると言っていたが、宗一にとっては、自分のために彼女の立場を危うくすることなどできなかった。人間なのだから死にたくはないが、だからといって、愛する女を犠牲にできるほど腐ってもいない。
ならば、いっしょに逃げればいいのではないのか。
そうも思った。なんとかチャンスを見つけてテスラと共に《ヘルファイア》から逃げ出すのだ。
もちろん追っ手はやってくるだろうが、宗一の組織に保護を求めればいいのではないか。
テスラは貴重な情報提供者として、悪くない待遇で迎えてくれるはずだ。
 思考は同じところを何度もぐるぐると回っていたが、やはりいっしょに抜け出すことこそ最善のように思われた。そう、それしかない。そして彼女と自分は幸せになるのだと宗一は思った。
 もう危険な世界での生活はやめて、どこか平和な国に小さな家でも買って、そこで暮らそう。田舎がいい。自然と戯れるのがいい。ペットも飼おう。犬がいい。猫もいいかもしれない。
なんでもいいから、平穏な暮らしがいい。
 仕事は、なにをすればいいだろうか。とりあえず食うに困らなければなんでもいい。
畑仕事でもすればいいか。自給自足。まあとにかく汗水をたらして働いて、一日中働いて、帰った家にはテスラが待っている。
それだけで天にも昇るほど幸せだ。
 テスラは宗一にお帰りなさいと言って、宗一はテスラにただいまと言う。
それから彼女が作ってくれた夕食をいっしょに食べて、いっしょに風呂に入って、いっしょにベッドに入り、そしてセックス。
テスラの大きな胸を好きなだけ揉み、その弾力を楽しみ、先端のピンク色をした乳首にむしゃぶりついて味わい、
腹を撫で、背中も撫でて、股の内側を舐め、柔らかい尻の肉にペニスの亀頭をぐりぐりとめり込ませて楽しんだあと、アヌスを舌でじっくりと責め、とどめとしてアナルに挿入。
 あんあん喘いで痴態を晒す彼女を尻で感じる淫乱だと罵ってレイプのように犯し、容赦なく精液を注ぎ込み、
抜きもせずにまた動き出して女を徹底的に蹂躙。
何度も何度も何度も何度も犯しに犯してたっぷり犯してそのあとは、売女のケツとクソで汚れた肉棒を売女の口で清めさせてまた汚れるその繰り返し。
 お次はそのどんな男のものでも受け入れる淫売マンコに狙いを定め、クリトリスを重点的に舐めまわしてヒィヒィよがらせ、
しかしイカせはせずに焦らして焦らして焦らしまくり、自分からぶちこんでくださいと言って完全服従を示すまではけっしてペニスを与えてやらない。
 ――宗一はいつのまにかズボンをパンツごと下ろして、勃起したペニスを自らの手でしごいていた。目は欲情に血走り、息は荒い。
 性器を慰める手の動きはすばやく、肉を肉がこする音は止まらない。
 卑屈な行為はいつまで続くのか分からなかったが、終わりは突然やってきた。
「ううっ」
 自分自身が与えた刺激によって、宗一の手の中でペニスは脈動する。その射精はテスラの奉仕によってもたらされたものよりもずっと短く、
 精液の量も少なく、なにより、脱力した後に惨めさだけが残った。
 シーツと床を汚してあたりに満ちる、すえた臭い。
 それを嗅ぎながら、宗一は自分の正気を疑った。
 
 いったい、自分はなにを想像していたのか。前半はまだいい。だがテスラを、愛する恋人を、あんな、まるで獣のごとく犯すなどと。平時では考えられないことだった。
 なぜか、途中から性的なことしか考えられず、愛するテスラとのセックスしか眼中になくなってしまったのだ。彼女のことを思うとたぎる性欲を我慢できず、その結果、ついオナニーに没頭した。
 月の魔力のせいだとでもいうのか。宗一はペニスをしまうことすら忘れて、思わず窓の外の月を見た。
 ――そこに、少女が立っていた。
 月明かりを背に受けてたたずむ少女の名を、キリエという。宗一にはもちろん、知るよしのないことではあったが。
 キリエは笑っていた。侮蔑を隠そうともしていない。
「いつも思うんだが……男のセンズリってやつは、どうしてこう無様なんだろうなあ。まるで猿だぜ」
 口調は乱暴だ。その容姿や声の美しさからは考えられないほどに。――テスラも宗一がこれまでに出会った女性の中ではもっとも美しい部類に入っていたが、
 キリエと比べれば子供の落書きに過ぎないだろう。キリエはそれほどまでに、人間を寄せ付けないほどの美しさを誇っていた。
 過ぎたるは及ばざるがごとしというが、キリエの場合はまさにそれだ。これでは言い寄る男などいるはずがない。
 宗一はそんな思いにとらわれたが、すぐに自分を取り戻した。
 最大のレベルで警戒する。裏の世界のプロとしての、いや、もっと根源的な生物としての本能が、眼前の少女を見た目で侮ってはいけないと判断していた。
 だいたい、いつ、どこからこの部屋に入ってきたというのか。
 それすらも悟らせないとは、尋常ではない。《ヘルファイア》の関係者か。
「何者だ、貴様は」
「フルチンでなに格好つけてんだよ、ばーか」
 指摘されるや否や未だにペニスを露出していたことに気づき、慌ててズボンを持ち上げようとする宗一のその顔は、珍しく赤い。
 ――だが、できなかった。驚愕に目が見開かれる。しかしできたことはそれだけだ。体が動かない。指一本すらも。
「ちょっとした術だ。魅了の邪眼ともいうが」
 キリエは眼のふちを指で撫でながら言う。その双眸の、血のごとき赤を見たとき、宗一は瞬時にして理解した。
 赤い瞳。魅了の邪眼。笑みと共に覗く、やけに大きく発達した犬歯。
「ヴァンパイアか……!」
「ご明察」
 宗一は神にでも祈りたい気分になった。
 ヴァンパイア――吸血鬼は、《ヘルファイア》が手駒とする改造人間や怪人とは毛色が違う。
 彼らのように人の手によって改造されて能力を得たのではなく、古くからの伝承どおりに、既存の吸血鬼によって吸血されることにより力を得る。
 日の光に背くことの代償として得るのは、永久の命、不死身の肉体、巨人のごとき怪力、邪眼、数々の超能力、オオカミやコウモリへの変身能力、吸血による種族の増殖などなど。
 その神秘の能力は改造人間と比べても遜色なく、むしろ永遠の命を得たことにより無限に成長し続ける分だけよけいにたちが悪い。闇夜の魔人として恐れられるゆえんだ。
「すると、さっきのアレは」
「サキュバスのまねごとも、たまにはいいもんだな。いい見世物だった。馬鹿の公開オナニーショー。あはははっ」
 悔しさに唸り声が漏れる。いつから術中にはまったのかも分からなかった。
 多くの場合、吸血鬼は長く生きているほど強力な力を持っている。目の前の少女はいったいどれほどの時代を経てここに立っているのか。
「何のつもりだ。俺に何の用がある!?」
「だから、フルチンですごんでも意味がないんだよ、間抜け。まあいいや。今日の私は機嫌がいいから、質問に優しく答えてやろう。おまえの血をいただきます。以上」
 つかつかと歩み寄ってくる吸血鬼を前にして、身を硬くすることしかできない。反抗は完全に封じられている。
「やめろ!」
 と口に出してみても、傲岸不遜なこの吸血鬼が止まるはずなどなかった。
「心配すんな。殺したりはしないから……たぶん。血を吸うだけだ。といっても、べつに血族にしてやるわけじゃないから勘違いすんなよ」
 間近に迫ったキリエの顔を見て、息が止まる。邪眼のせいなどではない。見とれてしまったのだ。
「なんだ。発情してんのか?」
 あざけりたっぷりに言われて初めて気づいたが、さきほど精を放ったばかりだというのに、宗一のペニスは硬さを取り戻しつつあった。
「残念だろうけど、私は人間ふぜいを相手になんてできないから、我慢しろよな。あとで自分で抜いてくれ。さっきみたいに無様にね」
「だ、だれがっ」
「まあ、そんな余裕が残っていればの話だけど。致死なほどには吸わないが、狂うかもよ」
 どういうことだ――と、宗一が訊く暇もなく、キリエはその首筋に遠慮なく噛み付いた。鋭い犬歯が肉をやすやすと突き破り、中に詰まった血液が音を立ててすすられる。
 途端に、宗一は悲鳴を上げた。いや、上げたつもりだったが、それは声にならない声として、むなしくキリエの耳に届いたのみだった。
 未知の快楽が宗一の全身を襲う。しかし果たしてこれを快楽と呼んでもいいのだろうか。それはさながら大砲から発射される砲弾を真正面から受け止めたような衝撃であり、
 身動きできないはずの宗一の体は発作を起こしたかのように飛び跳ね、ペニスは限界までいきり立ち、なんとすでに射精していた。
 目的もなく放たれた精液はビクンビクンと震えるペニスのせいでやたらと飛び散り、キリエの衣服にまで付着する。
 だがそれを気にしていないのか、気づいていないのか、傾国の美少女は宗一の血液をすすり続けていた。
 その間、休むことなく与えられる快楽は、当初からまったく衰える様子がない。十秒、二十秒、三十秒、一分。
 それは宗一が今までに体験したどんな苦しみよりもつらい、拷問と呼ぶのも生易しいほどの快楽。
 蚊は動物の血を吸う際に、麻酔薬のような自分の唾液を流し込み、相手が感じる痛みを中和するというが、吸血鬼にも同じような習慣がある。
 血を略奪する変わりに、快感を与えるのだ。つまり今のこれがそうだ。
 だがこれでは痛みを中和することはできても、人間の方が無事ではすまない。
 狂うかもしれないとキリエは言ったが、それどころではない。人を殺してしまいかねない。
 発狂させて、狂い死にさせてしまう。
 処刑。そう、これはまさに処刑だった。犠牲者の身も心も破壊する、甘美な処刑。
 宗一の、大きく開いた口からは涎が流れ、目は焦点が合わず虚ろとなり、いったんは萎えたペニスは次の射精に向けて硬さを増し、はりきり始めていた。
 キリエはやっと満足したのか、宗一の首から顔を上げる。血が口の端から滴る様子が、どうしようもなく淫靡だ。
 目には驚きの色があり、そしてなぜか少しだけ潤んでいた。
「……なんだ。意外と美味いな、おまえの血」
 返事はない。宗一は放心して、ただただ息を荒げている。余韻に浸っている余裕などない。死にそうなほどの歓喜のおかげで、瞳からは涙が零れ落ちていた。
 だが、終わったのだと安心している宗一を、さらなる地獄が待っていた。
 いたって真面目な顔で、キリエがぼそりと言ったのだ。
「いかん。発情した」
「へ?」
「いや、美味い血を吸ったあとは体が熱くなるんだよ。悪い。やらせて」
 言うや否や、キリエの衣服は魔法のように消え去って、あとにはやはり魔法のように美しい裸体が現れる。
 その肌の清らかな白さは吸血鬼の体だとは信じがたく、小さすぎず大きすぎない絶妙なボリュームの乳房は、この世のどんな男であろうとも狂わせる。
 キリエは未だに屹立しているペニスの上にまたがって、自身の薄い陰毛が生えた秘所をその先端にあてがった。それだけで宗一の腰はひくついて浮き上がってしまう。異常だった。
「さっきと同じくらい気持ちいいだろうけど、がんばれよ。んじゃ、失礼」
「おいっ、待て」
 と、言ってもキリエが止まることなどありえない。
 宗一は、本当の本気で死を覚悟した。
 キリエの言葉には嘘があった。さっきと同じくらいに気持ちがいいのではない。先ほどよりもさらに気持ちがいいのだ。
 すとん、と腰を下ろされて、騎乗位でキリエと繋がったその瞬間、宗一の理性は弾け飛んでいた。冗談ではなく心臓が止まり、絶息した。
 だが、キリエが腰を浮かすとペニスが濡れた膣の内部でこすれ、新たな快感を生む。その衝撃が宗一の心臓を動かし、生命を呼び戻す。
 その、繰り返し。
 挿入の時点ですでに射精していたことなど、必死の宗一は知らないし、キリエもまた気にしない。彼女にとってはペニスさえあればそれでよく、あとのすべてはどうでもいい。
 それは、人が触れてはならない境地。人が知ってはならない禁断の悦楽。
 人外の快楽だった。
「あはっ♪」
 嬉しげにして嬌声を上げ、腰を上下させつづけている。その動きに合わせて変幻自在にゆれる巨乳。
 平時だったならば、我を忘れるほどに魅入っていたかもしれない。だが今の宗一にとってはそんなものを眺めている余裕などなく、できることはひたすら気合で自分の正気を守ることだけだ。
 唇を噛み、あまりに強く噛んだがために肉が破れて血が流れる。
 そのか細い痛みで正気をどうにかつなぎとめることができていた。
 だが、血を流したのはまずかった。キリエは吸血鬼だ。血を吸う鬼だ。だから、宗一の唇を朱に染めるものを見てすることといえば、たったひとつだけだった。
 強引に唇を奪われ、そんな行為にも存在していた人外の快楽に悶絶する宗一のことなど知らず、キリエは勝手に気分を高めていく。
「んあ、いい、くそっ、けっこういいモノもってるじゃねえか、この下等生物ッ」
 頬は紅潮し、瞳はもうとろんとしているが、それでも口の悪さは変わらない。
 宗一はまたもや精液をキリエの膣に放っていた。キリエが上下する際に現れるペニスには白濁が泡となって絡みつき、淫らな音を立てている。
 今夜はこれで何度目の射精となるのか。宗一はすでに数えることをやめていた。というか、それどころではないのだ。
 快楽と戦わなければならないというのも、吸血鬼と交わるというのも、彼の人生には今までになかったことなのだ。
 理性が現実に追いつかない。
 どれほどの時間、人間と吸血鬼のセックスは続いただろうか。やがて、やっとキリエにも終わりが訪れた。
「くそったれ、もうイクッ……!」
 宣言すると共に、背を弓なりに反らし、ひときわ高い声を上げて吸血鬼は果てた。
 そのまま後ろに手をついて脱力していたキリエが、長い息継ぎのあと、腰を持ち上げて膣内からペニスを抜いた。
 開放されたペニスは、その運動の快感によってこりもせずに射精、しようとしたができなかった。空打ち――すでに宗一の精は尽き果てていたのだ。
 気だるげにベッドの傍らに立ち上がったキリエの陰部からは、どろどろと精子があふれ出て、太ももの内側を伝っている。
 しっとりと汗で濡れた裸体は凄艶そのもの。宗一はほとんど半死半生の体たらくでそれを見ていた。
 視界に、キリエの笑顔が飛びこんでくる。
「人間にしては、よかったぜ。体の相性がいいのかもな」
 答える気力もありはしない。
「どうだ。私のペットにならないか。毎日、今の調子で可愛がってやる」
 これにはさすがに全力で首を横に振った。
「ふうん。残念だな」
 それほど残念がっている様子はなかった。
 ――気づけば、体の自由が戻っている。宗一は起き上がろうとしたが、疲労のせいでそれはかなわなかった。キリエがまたせせら笑う。
「やめとけ。まだ動くのは無理だろ。とはいっても、せいぜい気張って動くんだな。死にたくなけりゃあ、な」
 なんのことを言っているのか、今度もまた分からなかった。この吸血鬼は、どうやら人の意見など徹底的に無視して自分のペースで物事を進めるようだ。
 宗一は文句のひとつでも言ってやろうと気合を入れて口を動かしたが、かすれた言葉の最初は勢いよく開かれたドアの音にかき消された。
 ただならぬ様子のテスラだった。
「宗一、急いで逃げる用意を――」
 世界の時間が停止した。ように宗一は感じた。
 全裸の少女。下半身丸出しでペニスを半ば勃起させている宗一。ただよう性の香り。
 部屋中のいたるところに付着している白濁とした液。少女の股間からも液。宗一のペニスにも汁。
「な、なにやっとんじゃおまえらああああっ!」
 大絶叫。魂の叫び。怒りに震えたシャウト。
 宗一はもたもたとズボンを上げて言い訳を考え始めるし、キリエはうっとうしそうに髪を弄っている。
 そのキリエにテスラは詰め寄った。
「なにを、なにをしていたんですか、キリエ様。もしかして、その、宗一と」
「セックス」
「そんな」
「なかなかよかったぜ。あはは」
 悪びれることもなく笑うキリエの、その目が、急に真剣な光を帯びる。
「で。そいつが、急ぎの理由か」
 視線は、テスラの背後に向けられていた。ドアのところに立つ人影に。
 二メートル近い長身を包むライダースーツをミチミチと引き伸ばすほど盛り上がった筋肉、両手にそれぞれ持つ得物は馬鹿げたサイズの拳銃。
 その頭部は、オオカミのそれ。異形だった。
 宗一はその男に見覚えがある。自身の組織の同僚、改造人間だ。名前はガルム。
 言葉はなかった。ただ、テスラや宗一の知らぬうちに戦いは始まり、そして終わる。
 地を蹴ったキリエがほとんど瞬間移動じみた素早さでガルムの頭上に跳躍、天井を蹴り、
 落下しつつその脳天めがけて腕をひらめかせるも、屈強な狼男の反応はそれらを上回り、上空に向けた二丁の拳銃の引き金を引いていた。
 轟音。
 弾はまっすぐに飛び、キリエの柔らかい肉にくらいつくと、その威力を存分に発揮する。
 ひたいに穴があいて後頭部からは中身が噴き出し、乳房の片方は弾けた。
 さらに轟音。
 立て続けに弾丸を撃ち込まれたキリエは天井にはりつけにされつつ血や臓物をぶちまけて肉片となり、
 物言わぬ灰塵と化してあたりに舞い落ちた。
 たった一瞬の攻防。それで決着がついたのは、ガルムがキリエを圧倒的に上回っていたからなのか。
 それとも、実力が拮抗していた両者のうち、たまたまガルムの方に天秤が傾いただけなのか。
 それはテスラには分からなかったが、とにかく、組織のナンバースリーを瞬く間に屠ったこの男の底知れない実力だけは理解できた。
 吸血鬼は不死身の怪物だ。五体をバラバラに刻んだところで復活する。それを許さなかったのは、
 常人では発砲の反動で手首の骨が砕ける銃の威力と、それを自在に操る身体能力。
 そして、あらゆる生物の弱点である心臓や頭部などを的確に撃ちぬいた技術力だ。
 狼男が静かに、しかし手早くしゃべる。
「宗一。助けにきたぞ」
「あ、ああ。だが、これはどういうことだ?」
「説明は後よ。今はとにかく、ここから離れるの」
 それはもっともなことだとうなずき、よろめく体をなんとか酷使して走り出す。
 三人が部屋から出て行った後、遅まきながら警報が基地中に鳴り響いた。正体不明の敵の襲撃を伝えるものだった。
 襲撃の目的はスパイの奪還にあると見た司令官が、拷問部屋に部下を送り込んだが、ときすでに遅しというものだ。
 部屋はもぬけの空だった。出入り口には見張りをつけていたはずなのに、そのふたりもなぜかいない。
「くそっ、逃げ出した後か……」
「探せ! まだ遠くには行っていないはずだ!」
 そうしてしゃにむに探し回る戦闘員たちのうちのひとりが、妙なものに気づいた。
 足元の床に積もっている、灰だ。
「なんだ、これ」
 そう言ったとき、まるで意思あるもののごとくうねった灰が、立ち上がって人の形をとり、その戦闘員の首筋に噛みついた。
「あげっ」
 と、反射的に上がった妙な声が、彼の遺言となった。
 噛まれた次の瞬間には破壊的なまでの快感に襲われて狂い死に、二秒後には全身の血を吸い尽くされてミイラになっていたからだ。
 なにごとかと仰天する戦闘員たちの目の前で、キリエは美しい姿を取り戻していた。
 搾取し尽くした男の死体をゴミのように投げ捨てて、表情には侮蔑の色をありありと浮かべている。
「不味いんだよ、カスが。外がだめなら中身ぐらいは磨いておけ」
恐れおののく雑兵どもの視線など気にもせず、歩き出す。気にする必要などありはしなかった。
 なぜならば、彼女は誇り高き夜の王者。卑小なものども裸を見られたところで恥じ入るはずがない。
 そして。もはや彼女の周りのすべての生命は死滅していた。
 キリエのあまりにも孤高なる美しさ――匹敵するものを持たざる美しさは、拝した者の肉と魂と霊を瞬時にして消滅させる。
 人間とは、なんと儚く、小さな存在なのだろうか。キリエがほんの少し気をゆるめただけで、その存在感に触れただけで死んでしまう。
 一糸まとわぬその体に、いつのまにか学生服が着せられていた。
 キリエは何千年もの歴史を持つ吸血鬼だ。灰と化したところで、そこから生身の肉体を再構築することなど造作もなかった。
 ガルムの銃による攻撃など、キリエにはまったく通用していなかったのだ。
 予知能力によってガルムとその仲間による襲撃は知っていたし、殺そうと思えば、裏切り者の雑兵や幹部ともども殺すことなど簡単だった。
 さきほど見せた動きなど、全力のうちの一割にすら満たないのだから。
 キリエ・ザ・ノーライフの能力は、人類の叡智が及ぶところを超越している。
 その戦闘能力は《ヘルファイア》の首領であるヘル・ザ・ヘルファイアも一目置くところであり、現実世界での戦いでは適わないと認めていた。
 宗一たちの命を奪うことは、ろうそくの火をかき消すよりもたやすいことだった。
 それをしなかったのは、ただの気まぐれだ。
 組織がこうむるダメージのことなどどうでもいい。もとよりキリエは《ヘルファイア》などに興味はない。
あまりにも暇だったので、首領を名乗る旧友の誘いに乗って幹部を務め、適当に遊び呆けているだけだ。
 人間どものなにがどうなろうとも知ったことではない。
 だから適当に、奴らを助ければ面白いことになるかな、と思っただけだ。
 キリエはそういったごく単純な理屈で動き、また、そういった理由でしか動かない。
 しかし、他に理由を挙げるとするなら――
「血が美味かったからな」
 くつくつ、と吸血鬼は笑っていた。


 基地に突入したガルムとテスラが鉢合わせしたのは、まったくの偶然だった。
 ガルムはテスラに銃口を向け、そこでもしも彼女の口から宗一との関係を教えられなければ、そのまま撃ち殺していただろう。
彼はテスラの言葉を完全に信じたわけではなかったが、その瞳は嘘をついているようには見えなかったし、
もしも謀られたのだとしても、ガルムにはあらゆる状況を打破できるという自信があった。
 テスラの扱いはというと、貴重な情報提供者――しかも非常に協力的なこともあり、乱暴な処置を強いられるということはなかった。
二十四時間体制での監視が行われ、行動範囲も著しく制限されてはいるものの、破格の待遇といっていい。
 命からがら組織の本部に帰還した宗一は極度の疲労状態に陥っており、三日も昏睡状態が続くことになる。
 そして目を覚ましたとき、ベッドの傍らには美麗なる女幹部がいた。
 テスラは心底から安堵した様子だ。
「目が覚めたのね。よかった……」
「……死ぬかと思ったがな」
 三日前、安心したと同時に睡魔に襲われ、そのまま倒れてしまったのだ。そして医務室にかつぎこまれ、昨日になってこの宗一の自室に移された。
テスラはその間、ずっと宗一のそばで看病をしていたのだ。
「仕方がないわ。ひどい扱いを受けたもの」
 どちらかというと、五日間に渡る尋問などよりも、あの吸血鬼とのセックスが疲労の原因だろう。それを言ってしまうとテスラの機嫌が悪くなりそうだったので、黙っておいた。
 しかし結局、あの吸血鬼は何者だったのだろうか。《ヘルファイア》の関係者だったのだろうか。まあ、なんにしても、すでにガルムが倒してしまった相手のことだ。答えを得る必要もないことなのだが。
 ふと見ると、テスラにジトっと睨み付けられている。なぜか宗一の脳裏に警告が鳴り響く。
「べつの女のことを考えていたわね」
「いや、そんなことは」
「いいわ。忘れさせてあげる。覚悟することね」
 猫科の獣のような俊敏さとしなやかさで宗一にのしかかったテスラは、シーツを剥ぎ取ると、その唇を押し付けて宗一の文句を封じ込めた。
 重く、甘い感触の乳房を胸板に感じ、ペニスを握られつつ、宗一とて負けてはいられないから反撃を開始する。
あっという間に衣服を脱ぎ捨てて生まれたままの姿となった男と女は、たがいの秘所をまさぐりあい、熱い吐息を交わし、肉欲のままに貪り合う。
 立場を入れ替えてテスラを組み伏せた宗一が、濡れそぼってヒクヒクとしている部分にペニスを挿入し、ふたりは正常位で繋がった。
久しぶりに味わうテスラの膣内の感触に、宗一は思わず総身を震わせる。
 キリエから与えられた凶悪な快楽ではなく、この悦楽は溺れれば溺れるほど安心できる。心の隙間を満たすかのように充足できる。それが嬉しかった。
 嬉しくて、思わず猿のように浅ましく腰を振る。
 テスラは悩ましく眉根を寄せて、絶叫した。
「はうっ……っ、あ、ふぁああんっ!」
 大きな乳を揺らし、金髪を振り乱しながら、半狂乱の様子なのに、それでも腕は宗一の背中に回って、爪で肉を引っかいている。長い脚は屈強な男の腰を締め付けて離そうとしない。
 怜悧な女傑の姿はどこにもなかった。
「いやっ、も、もう、あああっ、い、イクっ、イク、イッちゃうわよおっ!」
「……いいぞ、イけっ……!」
「あっ――ああっ、あはああああぁぁっ!」
 同時に絶頂に達したふたりは、唇を奪い合いながら、力強く抱きしめ合う。テスラの奥深くにまで進入していた剛直は、キリエとの一戦でのダメージから完全に回復を遂げており、精子の貯蔵量も十分だ。
白い子種は、何の問題もなくテスラの内部を蹂躙した。
 ビクンと痙攣するたび放たれる熱いマグマを感じながら、テスラは満足げだ。宗一の腰を捕まえた脚はけっしてその力を緩めることがなく、むしろますますきつく締め上げている。
「あはっ……でてるっ、宗一の精液、あたしのなかにでてるの分かるっ……」
 犬のように舌を突き出し、涎を垂れ流しながら、あられもない痴態を晒すテスラ。卑猥な言葉を使うことにも、なんのためらいもない。
「い、いいの、宗一? できるよ、赤ちゃん。妊娠しちゃう……」
「いやか?」
「いやじゃない、ほしいっ、宗一の赤ちゃんほしいっ! ほしいよっ!」
 ふ、と宗一は笑い、ペニスを抜きもせず、ピストンを再開した。病み上がりだというのにそれを感じさせない逞しさのペニスは、萎える気配を見せない。
 子宮をガツガツと突き上げ、内壁をゴリゴリと削るように攻め立て、テスラをよがらせ、狂わせる。
 激しい抽送の拍子に膣の内部から逆流した精液がジュクジュクと音を立て、淫靡だった。
 この濃密な時間とて、愛し合うふたりにとってはまだまだ序の口に過ぎない。
 ふたりの逢瀬は、いつまでも続くようだった。
 ――ということはつまり監視役のガルムはいつまでも部屋の外に突っ立っていなければいけないということであり、
 変身を解いている狼男は、人間の口からため息をついたのだった。
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